
こんにちは、
肩関節機能研究会の柳沢涼(@dianoace1)です。
今回は、肩峰下滑液包(SAB)と疼痛の関係性について解説します。
SABは肩峰下インピンジメントや腱板断裂など、
肩関節求心位を保てない患者への治療・介入で大きく関わってくる組織です。
肩関節の疼痛を訴える患者に対し、私の主観ですが、医師もSABに注射といった治療も展開されており、PT以外からも介入される重要な組織ではないでしょうか?
ここで疑問が浮かびます。
”SABに注射を打つ目的はなんでしょうか?”
”肩関節の疼痛とはどんな関係性があるのか?”
肩関節への介入でとても重要な役割をしているSABについて掘り下げていこうと思います。

肩峰下滑液包の解剖



①上面は肩峰下に強固に付着
②下面は腱板、大結節に強固に付着
③肩峰外は三角筋下に存在監修 福林徹他:Skill-Upリハビリテーション&コンディショニング 投球障害のリハビリテーションとコンディショニング:文光堂,8頁、2010
次に肩峰下滑液包に分布する支配神経について解説します。
三角筋から肩峰下滑液包へ腋窩神経の細い枝が走行している
H.Nasu et al:Distribution of the axillary nerve to the subacromial bursa and the area around the long head of the biceps tendon:Knee Sung Traumatol Arthrosc DOI 10.1007/s00167-014-3112-4
肩甲上神経の3つの感覚枝を肩峰下滑液包に走行している
Pierre Laumonerie,MD et al:Sensory innervation of the sudacromial bursa by the distal suprascapular nerve:a new description of its anatomic distribution:J Shoulder Elbow Sung(2019),1-7
以上2つの文献から腋窩神経と肩甲上神経から支配を受けていることが分かりました。
では、どのように神経が分布しているのか図を用いて説明したいと思います。
腋窩神経といえば三角筋や小円筋が有名だと思いますが、三角筋から枝が走っていることが分かります。
肩峰下滑液包に炎症により三角筋部に疼痛が生じるのは、このような分布が成されているためであると思われます。
肩甲上神経支配筋は、棘上筋・棘下筋です。
画像では、棘下筋からのみの枝ですが、棘上筋からももちろん走っています。
腱板断裂など棘上筋や棘下筋の影響を受けやすい疾患の疼痛は、筋だけでなく滑液包の影響も大きくなりそうですね😄
肩峰下滑液包の機能
肩甲上神経支配など、腱板と深い関わりを持つ肩峰下滑液包ですが、、、
①棘上筋を肩峰下面から保護する
②三角筋・棘上筋腱・上腕骨頭間の摩擦を抑える
などの機能は有名で知られている内容であると思います。
しかし、ここで私は疑問に思いました。

棘上筋腱修復のための線維血管組織は肩峰下滑液包である
HANS K.UHTHOFF &KIRITI SARKAR:SUGICAL REPAIR OF ROTATOR CUFF RUPTURES THE IMPORTANCE OF THE SUBACROMIAL BURSA:British Editorial Society of Bone and Joint Surgery ,73-B ,399-401 ,1991
ということは、腱板に対して血液供給を行なっているようです。
そのため、手術で肩峰下滑液包を切除した症例は、修復期間や腱板出力回復も術後リハで難渋する場合が多いのではないでしょうか?
肩峰下滑液包と神経終末
さて、解剖や機能についてインプットできたところで、今回の本題に入りたいと思います。
普段の臨床で肩の痛みといえば、”肩峰下滑液包”と思われている人も多いのではないでしょうか?
なぜ痛みを感じるのか?
痛みを感じる神経といえば、そう!
”自由神経終末”です。

肩峰下滑液包には、自由神経終末は存在しているの?
存在しないのであれば、何の組織が痛みを感じているのか?
このような疑問が湧きますね😄
疑問をさらに深掘りすると、
存在するのであるならば、正常患者と腱板損傷患者で神経終末の分布は変化があるのか?
どの範囲に集中的に存在しているのか?
場所から何か患者の症状と繋げられる事はないか?
というところに行き着きました。
それでは、私が読んだ論文を基に説明していきたいと思います。
森澤豊他:肩腱板、肩峰下滑液包、烏口肩峰靭帯における神経終末の観察–形態および分布について–
肩関節,20巻,第1号,117–122,1996
上記の結果より、腱板損傷後であっても正常であっても、肩峰下滑液包には神経終末が存在します。
特に自由神経終末は、他の神経終末と比較しても数値が高いのが分かります。
ということは、肩峰下滑液包は疼痛に敏感な組織であると結びつけることもできます。
特に烏口肩峰アーチ側面に集中して分布数が多いことから、肩峰下インピンジメントとは深い関係性を持ってるのではないでしょうか?
それでは、最後に私が臨床で多く症状として見られている”肩外側”の痛みについて
上記の知識を使いながら解説していこうと思います。
まず、以下のスライドをご参照ください。
これは、C4〜C6までの感覚支配の図となります。
私は、肩の疾患に限らず頚部疾患でもこの2ヶ所の疼痛を主訴とする患者は多く見られます。
先程解説したように肩峰下滑液包の神経支配は
”腋窩神経”と”肩甲上神経”です。
2つの神経はC4〜C6を支配しているため、肩峰下滑液包自体に組織的な障害が生じると上記の部位に関連痛や放散痛が生じると考えられます。
しかし、この2つの神経支配の筋は小円筋や棘下筋・棘上筋、そして三角筋があります。
そのため、どの組織が影響しているのかを評価する必要があります。
三角筋と棘上筋は解剖学的に付着しているため、相互に影響し合っている事は考えられます。
小円筋と棘下筋は付着がないため、一つ一つ評価し肩峰下滑液包が原因であると分かった段階で介入しましょう。
炎症が強い場合は、Dr.と相談し注射などの治療介入を行うのも一つの手段ですので、コミュニケーションを取るように心がけましょう!

まとめ
①肩峰下滑液包は、腋窩神経と肩甲上神経の二重神経支配な組織である
②肩峰下滑液包は、保護や摩擦抑制だけでなく腱板への血液供給も行なっている。
③神経終末が豊富な組織であり、特に自由神経終末が多いことから、
肩関節の疼痛の原因の一つとして考えられる。
④肩関節の疼痛については、評価の質が重要で評価を行なった上で
Dr.と相談した上での介入が重要である。
いかがだったでしょうか?
肩峰下滑液包は、これだけ深い組織であり疼痛の原因となる理由もご理解頂けたと思います。
初めての記事作成で、分かりにくい部分が多々あったのではないではないかと思います。
その点については是非、Twitter(@dianoace1)までDMまたはリプでご意見を頂けるととても嬉しいです。
普段も肩関節疾患に関わる内容をどんどん発信していきますので、フォロー等宜しくお願い致します。
私自身1年目でまだまだ至らない面も多々あると思いますが、
運動器のリハを盛り上げていける存在となれるよう精進して参りますので、今後とも宜しくお願い致します。
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以上、肩関節機能研究会研究生 柳沢でした。