
こんにちは、肩関節機能研究会研究生の佐藤(@masagaze)です。
今回は4月に行ったYouTubeセミナーでもお話した、”肩関節前方挙上の評価”についての記事となります。
前方挙上制限は、肩関節疾患を担当する上で必ずと言っていいほど遭遇するかと思います。
疾患や病態によって評価すべき点は異なってくるかと思いますが、基本的な着眼点を抑えていただければと思います😊
可動域測定や筋力評価などは皆さん行うことも多いかと思いますが、
数値だけ記載しておけばいいのでしょうか?
もしドキッとした方は最後まで読んでいただけたらと思います😊
それでは本題に入っていきます!
問診
問診では身体機能に関することだけではなく、その方の趣味や生活を踏まえたまで聴取した上でその後の目標設定に役立てていくと思います。
ただ、漠然と話していると情報がごちゃごちゃしてわかりにくい!と感じることもあるかもしれません。
まずは患者さんが困っているであろう”痛み”について、
取りこぼしのないように聞くためのコツとして、こちらをご覧ください( ´ ▽ ` )
これは私が痛みについて問診する際に参考にしていたものになります。
ご覧になってわかる通り、それぞれ聞くポイントの頭文字をとってOPQRST法と呼ばれています。
簡潔にご説明すると、
寛解・増悪 : 痛みが増強する、軽減するのはどんな時か ⇨ 痛みの解釈や介入のヒントに。
これらを聞いていくと、ヒントになる情報が得られることも多々あります。
例えば、
『なにも動かしていない時は痛くないが、手をあげると肩の前が痛いです。コキッとなります。
はっきりとしたきっかけはわかりませんが、少しずつ痛みが出てきて、同じ動きをすると同じように痛みが出ます。』
と言われたら、
などと考えることもでき、その後の評価に生かすこともできるかと思います。
項目が多く感じ慣れないうちは、あらかじめカルテや評価シートに項目を記載しておくと聞き漏らしをしなくて済むのでおすすめです😊
僕は思いつくままに聞くことで聴取し忘れてしまい、
・初期と比較した経過を捉えにくい
・先輩や同僚に相談する時に情報が不足しやすい
といったことになってしまったので、慣れるまでは事前にメモ用紙にOPQRSTを書いておくようにしていました( ´ ▽ ` )
視診・触診
次に視診・触診についてですが、私は静的・動的のふたつの視点で見るようにしています。
まず静的な評価では”肩甲骨アライメントと筋厚”について確認しています。
肩甲骨アライメントでは、脊柱からの距離や上方回旋・下方回旋を健側と比較して確認します。
若い方でも、痛みによって患側が大きく肩甲帯ごと前方に屈曲していたり、
上方にある棘上筋や肩峰下滑液包の伸張ストレスを軽減するために、下方回旋のアライメントを取っている場合もあります。
筋厚では、極端に萎縮していないか、また緊張が非常に高ければそのまま圧痛の確認をして、筋スパズムが起きていないかなども併せて確認しています。
次に動的な評価では、下にある写真のように
シュラッグサイン、挙上に併せた肩すくめの兆候がでていないかを確認し、
矢状面からは、胸郭がしっかり拡張できているか、また胸椎を中心に伸展ができているかを確認します。
脊柱の伸展では、胸椎の伸展があまり見られず、腰椎の過伸展で行う方をよくみかけます😅
例えば、
⇨肩甲上腕関節の可動域制限があり、肩甲帯で代償してしまっている??
・胸椎伸展が乏しい
⇨肩甲骨の後傾が出にくく、インピンジメントしやすい??
これらは一例ですが、他の評価と組み合わせることで問題点の抽出に役立つと考えています😊
視診・触診の最後は、肩甲上腕リズムになります。
ご存知の方も多くいらっしゃるかと思いますが、
とされています。
(正確には2:1以外の比率も多く報告がありますが、個人差も大きいため概ね2:1と考えていいかと思います。)
ただ、今述べたように個人差が大きいことや、臨床で正確な測定をすることが難しい、ことから
健側と比較して肩甲骨の運動が過剰なのか、過小なのか、が把握できれば良いかと思います。
解釈の例としては、
肩甲骨運動が過剰 ⇨ 肩甲上腕関節の軟部組織の伸張性低下に対する代償? 不良運動パターン?(口頭指示で修正可能?) 疼痛回避のパターン?
肩甲骨運動が過小 ⇨ 肩甲骨そのものの可動性が低下している? 胸椎・肋骨の可動性低下? 体幹筋群の固定性低下?
など様々ありますが、まずは大まかに挙上動作全体の特徴を掴むことが重要であると考えています🤓
ROMーT(自動・他動、座位・立位の解釈)
関節可動域は角度の測定ももちろん大事で、介入の経過を把握する上で一番わかりやすい指標になると思います。
ただ初回の評価では、角度を把握するだけでなくさらに重要視しているポイントがあるので、これからお伝えしていきます😊
まず可動域の測定は自動運動・他動運動の両方で行い、さらに自動運動は座位・立位で評価していきます。
自動運動(座位・立位)の確認ポイントとしては、
・挙上の制限に下肢や体幹機能の影響があるかが重要であると考えています。簡潔にお伝えすると、以下のように解釈することもできます。(下スライド参照)
立位 ⇨ 体幹の固定性が乏しい場合でも、下肢でのふんばりや腰椎過伸展などで代償が可能となる。
自動運動と他動運動の差を確認するポイントとしては、
例)・筋力低下 ・フォースカップル破綻によるインピンジメント
・軟部組織の伸張性低下によるObligate translation(骨頭変位)でのインピンジメント
・疼痛 など
筋、関節包、靭帯などの器質的な影響が強い。
などが例として挙げられます。(下スライド参照)
筋力評価
みなさんは筋力評価は普段どのように行なっていますか?
おそらくMMTなどの評価法を基に、左右差の確認などは行っているかと思います。
では筋力低下が認められた場合、肩甲上腕関節・肩甲胸郭関節のどちらに関わる筋力が優位に低下しているかについては評価されているでしょうか?
これらを把握することは、介入のターゲットを絞ることに役立ちます😊
評価方法の一例としては、肩甲骨を固定・非固定した状態で筋力がどう変わるか?などを確認する方法があります。
肩甲骨を固定することで、【肩甲骨の安定性を検査者が担保し、肩甲上腕関節の筋力にフォーカスして評価することができる】と考えられます。
例えば、
・非固定の状態と比べて、肩甲骨固定で筋力が向上した場合 ⇨ 肩甲胸郭関節の安定性に関わる筋(前鋸筋など)の筋力低下が疑われる。
などが考えられるかと思います。
私が評価するに気をつけている点としては、
最終域ギリギリの角度では、痛みによって正確な筋力が把握できない場合もあるため、最大挙上位から少し角度を下げた状態で評価するようにしています( ´ ▽ ` )
まとめ
今お伝えした評価項目はあくまで一部になります。
他にも、姿勢評価やエンドフィールの確認、整形外科的テストetc…と、状況に応じて評価すべき点は様々ありますが、
まずはこういった基本的なものから、”おおまかにどこが問題点として浮かび上がってきそうなのか?”を把握することが大事ではないかと考えています😊
私も肩関節疾患の方を担当し始めたばかりのころは思いつくまま評価を行なって混乱した経験がありましたが、
・問診で得た情報を基に、痛みの状況はどうなっているのか?
・体幹や下肢の影響はあるのか?
・肩関節自体がかたくなってしまっているのか?
・肩関節自体の硬さはないが、筋力低下や求心位保持ができないことによるインピンジメントが問題なのか?
など、数値以外の情報も得られるようになると問題点の抽出や介入のポイントが浮かび上がってくると思います😊
事前にどんな視点で評価していくのかを頭に浮かべておき、少しずつターゲットを絞っていけるようになりましょう!
(偉そうに言ってしまいましたが、私もいまだに迷いながら臨床に臨んでいます^^; 一緒に成長していきましょう★)
お知らせ
最後まで記事をご覧いただき有難う御座いました( ^ω^ )
肩関節機能研究会からセミナーのお知らせです!
7月5日(月)に肩関節機能研究会代表の志水(@echohuku)、研究生の老月(@oidukiryutarou)、佐藤(@masagaze)による”深める結帯動作”と題したオンラインセミナーを開催することになりました⭐︎
日時:7月5日(月)21:00~22:00(開場20:45~)
参加費:500円
内容:①結帯動作とは?
②評価の着目点と解釈
③評価を基にした介入
また今回のセミナーはアーカイブ動画がございますので、開催翌日から1週間は何度でも見返すことが可能となっております。
当日参加が難しい場合でも、ぜひ興味がありましたらご参加ください( ´ ▽ ` )
セミナー詳細、お申し込みはこちらから👇
https://xpert.link/online-seminar/2471/