
こんにちは、肩関節機能研究会の佐藤(@masagaze)です。
今回は肩甲下筋の形態学的特徴について、解説していきます。
腱板筋群は肩関節の求心位を保つ役割を持っていますが、
外旋筋・内旋筋の二つに大きく分かれており、
外旋筋は棘上筋・棘下筋・小円筋の3筋で構成され、内旋筋は主として肩甲下筋一つで構成されています。
棘上筋や棘下筋は肩を普段臨床で見ない人でもよく耳にするかと思いますし、
比較的触診もしやすいため理解されている方も多いと思いますが、
肩甲下筋は意外と重要な役割を持っているので、今日はそこを少し掘り下げて話していきたいと思います。

そもそも筋内腱って?
まずは筋内腱についてです。
筋内腱とは、
構造上、筋繊維の付着面積を広げ、かつ付着する筋によって生じた力を一か所に集中させる働きがあると考えられる。
引用 皆川洋至他:腱板を構成する筋の筋内腱ー筋外腱移行形態について:肩関節20(1),103-110,1996.
と報告されており、いわゆる”羽状筋”はそれに当たります。
下のスライドのように筋内腱は、筋繊維の中に1本、またはそれ以上が大きく広がるように筋繊維に広がっていきます。
このように筋内腱を有する筋(羽状筋)は、筋繊維自体が短くなり、運動範囲は小さくなりますが、強力な力を発揮することができるという特徴を持っています。
肩甲下筋付着部の解剖学的な特徴


舌部は上腕二頭筋長頭腱(LHB)の滑走床を形成し、LHBの内側を支えるような構成となっている。
Arai R, et al : Subscapularis tendon tear : an anatomic and clinical investigation. Arthroscopy.24(9) : 997-1004,2008.
回旋筋腱板筋の筋内腱はどうなっている?
基本的な、筋内腱とは?肩甲下筋の解剖は?という内容が理解できたところで今回の本題です!
回旋筋腱板に着目して筋内腱を見てみると、
外旋筋である棘上筋・棘下筋・小円筋はそれぞれ一本の筋内腱を有していますが、
肩甲下筋は3~5本(個体差あり)も筋内腱が存在しています。
これまでの話にもありましたが、”筋内腱がある=腱に力が集中して強い力が出る”でしたね。
回旋筋腱板は上腕骨を骨頭に引き付ける”安定化”の作用がありますが、
肩前方に存在する肩甲下筋と、肩上方~後方に存在する他3筋は筋内腱の数がほぼ同じということがわかります。
なぜ3~5本必要かについては、
上部繊維の筋活動は不変・もしくは低下する
このように言われています。
仮に筋内腱が一本しかなければ、その筋内腱に対応した挙上角度でしか強い筋収縮が得られず、
”骨頭を求心位に保つ”という重要な機能が破綻してしまうことが考えられます💦
また、筋力と筋断面積は相関があるとの報告がされていますが、
外旋筋(棘上筋+棘下筋+小円筋)の筋断面積と、内旋筋(肩甲下筋)の筋断面積はほぼ同等
とも言われています。
これらのことからも、外旋筋群(棘上筋+棘下筋+小円筋)と内旋筋である肩甲下筋は形態学的にもフォースカップルを形成し、
挙上動作などの際にはお互いに拮抗し合いながら働き、上腕骨頭を肩甲骨関節窩に引き付けていることがわかります。
まとめ
①肩甲下筋停止部は、上腕二頭筋長頭腱を下内側から支持するように位置しており、
上腕二頭筋長頭腱の病変では肩甲下筋の損傷や機能低下が存在する可能性がある。
②外旋筋群3筋(棘上筋+棘下筋+小円筋)に対し、内旋筋は肩甲下筋が単独で対応するため、
筋内腱が複数(3~5本)存在し、肩甲上腕関節の求心位獲得に寄与している可能性がある。
③筋力と相関があると言われている生理的筋断面積も、外旋筋群の総和に対し、
肩甲下筋単独でほぼ同様の断面積を有している。
いかがだったでしょうか?
あまりフォーカスされることが少ない肩甲下筋でしたが、
隠れボスのような強靭さがありましたね😁
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