筋肉の萎縮や脂肪浸潤は回復するのか?

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こんにちは。
肩関節機能研究会の郷間(@FujikataGoma)です。

今回は腱板断裂後にみられる筋肉の萎縮や脂肪浸潤は回復するのか、それとも回復しないのか?

そんなテーマでまとめてみました。

結論からいいますと

組織学的には筋肥大もするが、リハビリのやり方次第です。

 

少し難しいお話になりますが、患者さんへの病態説明や後輩指導の時にも活用できる知識となっておりますのでポイントだけでも覚えておきましょう(^-^)ノ

では、筋の萎縮や脂肪浸潤はどのように評価すればいいのでしょうか?

郷間
腱板断裂後の定性評価としてGoutallier分類が有名ですね!

脂肪浸潤の評価-Goutallier分類とは-

Goutallier分類(脂肪浸潤分類)とは文字通り筋肉内に浸潤した脂肪の割合をMRI画像で定性評価し分類したものです。

Christian Gerber,et al : Correlation of atrophy and fatty infiltration on strength and integrity of rotator cuff repairs: a study in thirteen patients.JSES, ;16(6):691-6.2007.

Goutallier分類にはStage0の浸潤なしからStage4の筋肉と比して脂肪が多い状態の5段階に分けられます。

※↑のスライドでは筋肉が黒、脂肪が白く映っています。

Goutallier分類
Stage0 脂肪浸潤なし(ほとんど筋肉)
Stage1 僅かに脂肪の浸潤を認める(脂肪<<筋肉)
Stage2 脂肪の浸潤が進行しているが、比較的筋肉が多い(脂肪<筋肉)
Stage3 脂肪の浸潤と残存している筋肉の割合が同等(脂肪=筋肉)
Stage4 脂肪が浸潤しほとんど筋肉が無い状態(脂肪>筋肉)

一般的にGoutallier分類のStage3以上の場合は 修復できたとしても機能しないといわれています。

・脂肪浸潤は回復しない。
・萎縮も部分的に回復するのみ。
・筋の脂肪浸潤と萎縮は不可逆的な変化である

Christian Gerber,et al : Correlation of atrophy and fatty infiltration on strength and integrity of rotator cuff repairs: a study in thirteen patients.JSES, ;16(6):691-6.2007.

・脂肪浸潤の進行や大きな断裂を認める症例では 筋への不可逆的な損傷が生じる前に修復を考慮する     

D Goutallier,et al: Fatty muscle degeneration in cuff ruptures. Pre- and postoperative evaluation by CT scan. Clin Orthop Relat Res 304:78-83:1994

 

腱板修復術1年後の経過では 筋委縮の回復したとしても部分的であるとともに、筋の脂肪浸潤と萎縮は不可逆的な変化であるとされています

 

腱板修復術後の機能(疼痛、可動域、筋力)

こちらの報告のように、

通常の腱板修復術よりも機能的回復が期待できるとされているDebeyre patte変法(前進法)においても

疼痛や可動域は回復しますが、筋力の回復にはばらつきがあり、筋萎縮も改善しなかったと報告されています。

国分毅,他:良好な腱板修復により大・広範囲断裂の筋委縮は改善するか?.肩関節,44:505:2020.

 

ここで思うのが

筋力の回復にはばらつきがあり、回復する人もいれば回復しない人もいる

ということは一概に萎縮や脂肪浸潤は回復しないとは言い切れないのでは?という疑問です。

 

これらの報告はあくまで術後の経時的変化を報告したものであって、組織学的観点からみると結果が変わるのではないか?

 

ということで調べてみたら報告は少ないですがちゃんと出てきました。

組織学的な筋の回復

 

結論

脂肪浸潤した筋も組織学的には回復します。

筋線維の細胞膜と基底膜の間には、単核の衛星細胞 (サテライト細胞) と呼ばれる幹細胞が存在します。

この筋衛星細胞は脂肪浸潤した筋肉においても、正常な細胞と同等の筋管形成能を持っている可能性が示唆されています。

Masashi Koide,et al: Retained Myogenic Potency of Human Satellite Cells from Torn Rotator Cuff Muscles Despite Fatty Infiltration. The Tohoku Journal of Experimental Medicine.244,15-24,2018.

 

もう少し簡単に説明します。

こちらのスライドのように

脂身のお肉(脂肪浸潤)も赤身のお肉(正常な筋)と同等の筋再生能(筋管形成能)を持っている。

ということです。

 

筋衛星細胞vs脂肪前駆細胞

こちらの項では筋衛星細胞と脂肪前駆細胞の関係について解説していきたいと思います。

 

そもそも筋衛星細胞と脂肪前駆細胞とはどのような細胞なのでしょうか?

筋衛星細胞(サテライト細胞)
 ✓筋再生や筋肥大に重要な細胞
 ✓筋線維の基底膜と形質膜の間に局在
脂肪前駆細胞
✓エネルギーを脂肪に分解する 
✓サイトカインやホルモンを生産する細胞
このように、筋を再生や肥大させる細胞と筋を脂肪にしてしまう細胞の2種類があります。
なかでも筋を脂肪にしてしまう脂肪前駆細胞は筋が萎縮することで生じやすいとされています。
また、萎縮した棘上筋は脂肪前駆細胞が優位に増加したとも報告されており、脂肪浸潤を防ぐためにも、萎縮を予防する必要があることがわかります。

Masashi Koide,et al: Retained Myogenic Potency of Human Satellite Cells from Torn Rotator Cuff Muscles Despite Fatty Infiltration. The Tohoku Journal of Experimental Medicine.244,15-24,2018.

 

そのためにも筋サテライト細胞の増加を促し、脂肪前駆細胞を減少させることが重要であることがわかりますね。

 

 

 

では今回のおさらいになります。

 

筋衛星細胞(サテライト細胞)の活性化を促すためには、

腱板の断裂した筋衛星細胞は十分な筋分化を得る必要があります。

したがって微小環境などを調整し、適切な筋分化の刺激を与える必要があることがわかります。

 

リハビリの運動療法が如何に重要か、そして目的の筋を如何に効率よく賦活化を図れるかが重要かと思います。

まとめ

✔Goutallier分類は脂肪浸潤を定性的に判断する指標として非常に有用である

✔Debeyre patte変法(前進法)では疼痛や可動域などは回2年は図れるが、筋力は改善しなかった

✔修復した筋肉は萎縮・脂肪浸潤していく不可逆のものではなく、組織学的は筋肥大もすることが示唆されている。

 

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