烏口上腕靭帯が瘢痕化するとは?

こんにちは。

肩関節機能研究会の郷間@FujikataGomaです。

今回はみなさんも1度は講義で聞いたり書籍で目にしたことがある『烏口上腕靭帯の瘢痕化』という現象について組織学的な観点から言語化していきたいと思います。

 

烏口上腕靭帯は下垂位外旋制限などに関与する非常に重要な組織です。

 

 

本記事を読んでいただくことで、永遠の疑問であった”烏口上腕靭帯の瘢痕化”を説明できるようになり、また臨床上も瘢痕化予防や改善に繋がるヒントが見つかるかもしれません。

 

 

この記事を読んだ人が
少しでも烏口上腕靭帯に興味を持っていただけたら幸いです。

 

 

それでは一つずつ解説していきたいと思います(^-^)ノ

 

 

本記事はこんな方には特にオススメの記事です
▪烏口上腕靭帯の瘢痕化。を上手く説明できるようになりたい
▪どのような介入、指導できるようになりたい

本記事は3~5分ほどで読み切ることができますので、ぜひ最後まで読んでみてください(^-^)

そもそも瘢痕化とは?

瘢痕化とは
様々な器官の組織欠損が、肉芽組織の形成を経て、最終的に緻密な膠原線維や結合組織に置き換わる事で修復された状態
肥厚性瘢痕や、ケロイド、さらに引きつれたもの(瘢痕拘縮)などの状態がある。瘢痕の形成過程を瘢痕化あるいは器質化と呼ぶ。
                                        引用:Wikipedia

瘢痕化は肩関節の炎症(炎症性サイトカインの活動)後や過剰な代謝(発汗)などを経て、修復過程で緻密な膠原線維(collagen線維)や結合組織に置き換わってしまう現象のことのようですね。

※遺伝性という説もあります。

ちなみに形成外科の先生に教えていただいた話ですが
鼻下や肘、胸、膝、足首は肥厚性瘢痕が生じやすいとのことでした。

これらの共通点って何だと思いますか?

そうです。

”皮膚の伸張率が多い部位ほど肥厚性瘢痕が生じやすい”のです。

こちらの写真を見ていただくとイメージしやすいと思いますが、写真②の内果創部が最も肥厚性瘢痕が大きいですよね。

烏口上腕靭帯の瘢痕化とは?

では実際に烏口上腕靭帯ではどうなるのでしょうか

尾崎らの報告によると
・痛みによる筋の防御性収縮、筋断裂、関節周囲組織の損傷など、何らかの原因で烏口上腕靭帯のrotatorinterval(停止部)に瘢痕様組織が介在し内旋位拘縮(外旋制限)が生じる。
・手術所見においては烏口上腕靭帯がrotatorintervalとともに瘢痕化し、内外旋のブレーキとなっている。
・烏口上腕靭帯を切除していくと内外旋のブレーキが外れ最大挙上位が可能となったと報告しています。[1]

烏口上腕靭帯の瘢痕化は肉眼で見ても明らかなようですね。

組織学的な烏口上腕靭帯の付着部でも述べましたが

烏口突起周囲(基部)はエコーで同定できますが、大小結節に近づくと関節包などの前上方支持組織と一体化するため、肉眼的にも組織学的にも明瞭に境界を同定することは困難です。

また、烏口上腕靭帯は

”膜様で弾力性と伸張性に富むコラーゲンタイプⅢの疎性結合組織”であるといわれています。

ここはとても重要なポイントですので少し引用も加えておきますね。

コラーゲンTypeⅠ
最も豊富なコラーゲンであり、事実上すべての結合組織で発現している。ほとんどの靭帯がTypeⅠに分類される。

コラーゲンTypeⅢ
TypeⅠの存在する組織にはIII型コラーゲンも共存する場合が多く、真皮や大動脈に多く分布する。TypeⅢは創傷治癒過程の初期段階で増殖する。ScienceDirectより一部引用改変

疎性結合組織
器官や上皮を保持し、コラーゲンやエラスチンを含む多様なタンパク質性の線維を有する。collagen線維が少なく、皮下組織や多くの器官や組織の間に存在する。

密性結合組織

靱帯や腱を形成する。 密性結合組織には強力な伸長強度を示すコラーゲン線維が詰め込まれている。
膠原線維が多く、靭帯、真皮、腱、骨膜などがある。

少し難しい話になってしまいましたね(^-^;

コラーゲンや組織の話は今すぐ覚えなくても大丈夫です。

少し難しいと感じた方はこのイメージだけ覚えておいてください。

コラーゲンタイプのイメージ
TypeⅠと密性結合組織=ベルト(バシッバシッといった感じ)
TypeⅢと疎性結合組織=ゴム(びよーんびよーんといった感じ)

エコーを用いた異常動態の観察

では、この烏口上腕靭帯の伸張性が低下(瘢痕化)した場合、どのような動態になるのか、動画を確認してみましょう。

これらのことから、烏口上腕靭帯においては痛みによる筋の防御性収縮、筋断裂、関節周囲組織の損傷に伴う短縮や瘢痕化などの要因が複雑に重なり、結果として可動域が制限してしまうということですね。

炎症期は無理に動かしたりすることで、肥厚・瘢痕化を助長しかねないです。

また、長期の炎症はデメリットが多いので、瘢痕化の予防はもちろんですが、”瘢痕化を助長しない介入”というのが重要だと考えられますね。

そもそも烏口上腕靭帯ってどんな組織だろう?という疑問を解決したい方はぜひ下記ボタンから烏口上腕靭帯に関する解剖学的なお話や、徒手療法、組織学的な付着部などの解説をしておりますのであわせてご覧ください(^-^)ノ

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記事1⇩

記事2⇩

まとめ

✓瘢痕化とは肩関節の炎症後や過剰な代謝などの修復過程を経て緻密な膠原線維や結合組織に置き換わってしまう現象のこと。

✓烏口上腕靭帯における瘢痕化予防のためには慢性的な炎症や痛みによる筋の防御性収縮などを予防しつつ、痛みの伴わない範囲で愛護的な介入をすべきである。

✓炎症期、拘縮期、回復期などの経過をしっかり理解し、適材適所の介入が重要である。

参考文献

[1]尾崎二郎,他.:烏口上腕靱帯とrotatorintervalの機能と病態について.肩関節;10:5-8.1986.

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