こんにちは。
肩関節機能研究会 代表の郷間(@FujikataGoma)です。
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今回は肩関節の臨床で必ず遭遇するといっても過言ではない『肩すくめ徴候:Shoulder shrug sign』についてまとめました!
こんな人は読むべき
- Shoulder shrug sign(ショルダーシュラッグサイン)という言葉を初めて聞いた。
- 肩挙上時に肩をすくめる患者さんを経験したことがある
余談ではありますが私は普段、Shoulder shrug sign(ショルダーシュラッグサイン)のことを”Shrug(シュラッグ)”と呼んでいます。
Shoulder Shrug Signとは?
Shrug=すくめる
Sign=徴候
直訳すると文字通り”肩をすくめる徴候”です。
ちなみにGoogleで「Shrug 画像」と検索するとこのような画像が出てきます。
とても楽しそうな画像です。
しかし医学的に用いるShrugは少し動きが異なります。
Jia,X.et al. Clinical Evaluation of the Shoulder Shrug Sign. Clin Orthop Relat Res .2008; 466:2813–2819
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このように肩関節を90°外転しようとすると肩甲骨が代償的に挙上・上方回旋してしまう現象は皆さんも日々の臨床で遭遇したことはありませんか?
私は初回評価はもちろん、凍結肩の患者さんの大半にスクリーニング評価として用いています。
そもそもなぜこのような現象(徴候)が生じてしまうのでしょうか?
まずは構造的なところから私なりの考えも交えて解説していきたいと思います。
Shoulder shrug signの構造的な解釈
信原克哉:肩 その機能と臨床 第3版,医学書院,2001.
肩関節は挙上の際、大結節は3つの経路を通過しており、それらの経路も前方路、中間路、後外側路と3つに分けられるため、理論上は9つに区分されると言われています。
林典雄:関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション 上肢・体幹 改訂第2版 出典:メジカルビュー
rotational glide 80~120°
Post-rotational glide 120°以降
中間路:肩甲骨面上挙上
後外側路:外転運動
※補足 内外旋でも異なります
そのなかでも今回は大結節が通過する3つの経路について少し掘り下げていきたいと思います。
Pre-rotational glide
Pre-rotational glideは 挙上0~80°の時期のことで、大結節が烏口肩峰アーチを通過する前段階の区間のことを言います。
基本的には0~80°の時点で可動域に制限が生じる場合は肩峰下インピンジメント以外の要素を考えるのが妥当であることがわかります。
この時期での挙上制限因子として最もポピュラーなのは腋窩周囲(肩関節下方軟部組織)の柔軟性、伸張性低下によるものが考えられます。
rotational glide
rotational glideは挙上80~120°の時期のことであり、大結節が烏口肩峰アーチを通過中の区間のことを言います。
この時期はPainful arc sign(有痛弧)の60~120°とも少し似ていますね。
ちなみにPainful arc signは肩に痛みが生じる場合は腱板断裂の感度が71%、特異度が81%であり、信頼性も高い疼痛誘発試験としても有名ですね。
この時期の痛みや可動域制限は、肩峰下インピンジメントの影響が最も多いとされることが多いです。
腱板損傷のMeta-analysis
JAMA Rational clinical examinationより (JAMA. 2013;310(8):837-847.)
Post-rotational glide
Post-rotational glide は挙上120°以降の時期のことであり、大結節が烏口肩峰アーチを通過後の区間のことを言います。
この時期の可動域制限も臨床では頻繁にみられるところではありますね。
大結節が烏口肩峰アーチを通過したからと言って必ずしも軽快に可動域が獲得できるというわけではないですね。
軟部組織としては大円筋や小円筋の可動域制限が多い印象です。
これらに関しても改めて記事を執筆いたしますので追々お待ちください!
それでは実際に各区間を通過する動画を供覧してみましょう。
このように正常であれば大結節が烏口肩峰アーチを円滑に通過します。
これらのことから、Shoulder shrug signが生じている場合は
Pre-rotational glide(0~80°)を除外したrotational glideおよびPost-rotational glideで何らかの破綻が生じていることが考えられます。
では、ここまで解説した大結節と烏口肩峰アーチの部分だけに何らかのアプローチをすれば必ずShoulder shrug signは改善できるのでしょうか?
恐らく答えは”NO”だと考えます。
そもそもShoulder shrug signは自動運動です。
自動挙上運動は肩甲上腕関節のみで遂行しないですよね。
確かに挙上動作のほとんどは肩甲上腕関節により遂行していることは事実ですが、肩甲胸郭関節や胸鎖関節、肩鎖関節など様々な関節が複合的かつ複雑に共同して1つの動作を成し遂げています。
これらを理解しておくことでさらに臨床成績も上がりそうですね。
お時間がある方は合わせてこちらの記事も読んで、肩にある種々の関節の理解を深めてみてください(^-^)
きっとみなさんのお力になれる記事かと思います♪