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こんにちは!肩関節機能研究会の郷間です。
今回は、肩関節において敬遠されがちな肩甲胸郭関節についての記事になります。
肩関節を診ていくうえで、胸郭の基本的な機能解剖、肩関節との関連性、および治療方法を紹介します。
胸郭の機能解剖と肩関節との重要性を理解するために、まず肩関節と胸郭がどのようにつながっているかを説明します。
肩関節と胸郭の関係
肩甲上腕関節は、球関節で体幹に近い位置にあり、股関節と同じくらい重要です。
ただし、股関節が荷重を支える関節であるのに対し、肩甲上腕関節は非荷重関節です。
股関節は大きな臼蓋で骨頭を覆っていますが、肩甲上腕関節の関節窩は骨頭の表面積の5分の1しかなく、非常に小さいです。また、股関節の臼蓋は安定した骨盤の一部ですが、肩関節の関節窩は不安定な肩甲骨の一部で胸郭の上を動きます。
菅谷啓之.肩インピンジメント症候群の概要.臨床スポーツ医学.36(2).2019.112-115.
上肢は骨で胸郭に接続されているのは鎖骨だけです。
胸鎖関節は胸骨と鎖骨で、肩鎖関節は鎖骨と肩甲骨で構成されています。これらの関節の動きにより、肩甲胸郭関節が生じ、上肢の動きは胸郭や周囲筋の筋機能に大きく依存します。つまり、上肢の運動には胸郭が不可欠です。
姿勢や胸郭・体幹の機能、筋機能が損傷すると、肩峰下滑液包炎、肩腱板炎、腱板断裂などの肩関節疾患が発生する可能性があります。
次に、肩関節疾患と胸椎の関係についていくつかの例を見ていきます。
菅谷啓之.運動器慢性疼痛の診断と治療 3.肩周囲の長引く痛みー肩関節周囲炎,腱板損傷,インピンジメント.整形外科63:802-807, 2012
肩関節疾患と胸椎の関係
肩峰下インピンジメントと胸椎の関係では、肩関節の後下方軟部組織のタイトネスだけが原因ではありません。胸部姿勢や胸椎伸展角度との関連も強いと報告されています。
例えば、左側のModified cobb angleを調べると、インピンジメント(閉塞)群と比較して、コントロール群(インピンジメントが無い群)のTh1とTh10の間の角度が大きく、胸椎の後弯角が大きいことがわかります。また、右側の自動で胸椎を伸展し、その胸椎傾斜角を測定した結果も、インピンジメント群では角度が大きいことがわかります。
つまり、肩峰下インピンジメント患者は胸椎後弯が大きく、胸部伸展が小さいため、不良姿勢がインピンジメントに関与することが考えられます。
山本らの報告では、自然立位姿勢においてもインピンジメントのみならず腱板断裂との関連があると言われています。80歳以上の男女において、胸腰椎の後弯姿勢が腱板断裂との相関関係があったと報告されています。
これらの不良姿勢は、時間をかけて生じたものであり、数回の指導で改善するわけではありません。しかし、姿勢という多角的な視点を持ちながら、肩甲上腕関節に対する介入も忘れてはいけません。
肩の問題は肩だけを見て治療することはできません。
肩関節疾患と脊椎の関係を理解したところで、胸郭とはどのようなものか、そして機能解剖学的観点から説明していきます。
胸郭(胸部)とは
胸郭(胸部)は、頸椎や腰椎と比べて関連する関節の数やバイオメカニクスが複雑で、「沈黙の貢献者」や「シンデレラ領域」とも呼ばれています。
胸椎は重要だと感じる人も多いですが、頸椎、肩関節、腰椎の疾患と比較して、症例数や研究の数が少ないことも事実です。しかし、胸椎の問題が他の部位に影響を与えることは容易に想像できます。
胸郭の機能分類を理解することは、胸郭の病態運動を捉える上で重要です。胸郭は以下のように分類されます。
下位胸椎:第7~第10肋骨
浮遊肋:第11肋骨と第12肋骨

②一側の上位胸郭と下位胸郭が同一方向へ回旋し、対側の上位胸郭と下位胸郭が相反する運動(左右の関係)
③一側の上位胸郭と対側の下位胸郭が対角線上に同一方向へ回旋し、一方の対角線上で胸郭が相反する運動(対角線の関係)
これらが複合的かつ複雑に生じて体幹は運動するというわけですね。では簡単な胸郭の分類の仕方と運動パターンを理解したところでどのようにな点を工夫して介入していけばいいのでしょうか?
今回の記事では矢状面上運動である①上下の関係を深く掘り下げていきましょう。では矢状面からみる胸椎の上下運動で重要なポイントは挙上時に胸椎がどのレベルで伸展するかを理解することと、分節運動を誘導することです。
それは挙上時に胸椎はどのレベルが伸展するかをみる”基本動作の理解”と”分節運動の誘導”です。