
みなさんこんにちは!
肩関節機能研究会の柳沢涼(@dianoace1)です😄
今回は小円筋の解剖学について執筆させていただきます。
小円筋について調べようと思った経緯としましては、前回の記事で腋窩神経について執筆させていただきました。
小円筋は腋窩神経支配の筋であり、腱板筋群でもあるため臨床的に機能解剖を理解することが重要な筋であると考えたため、改めて機能解剖を理解するために執筆しようと思いました。
前回の腋窩神経の記事はまだ読んでいない方は、是非こちらからご覧ください。
では、内容に入っていきましょう!
小円筋の基礎解剖(基礎編)
小円筋は回旋筋腱板(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)の1つであり、前方と後方の腱板筋が共同して骨頭を関節窩へ引きつける作用(force couple)があります1)。
その中でも、小円筋は棘下筋とともに外旋筋として働き、後方から上腕骨頭を安定させる動的安定化機構としての役割を持ちます。
では、小円筋の起始停止についておさらいをしましょう。国家試験の際はこのように勉強したのでは無いでしょうか?
停止:上腕骨大結節
神経:腋窩神経(C5~C6)
作用:肩関節外旋
中村隆一ほか:第6版補訂 基礎運動学;医歯薬出版株式会社
腱板の他の3つの筋もそうですが、臨床上必要な機能解剖的特徴があるということに、勉強しながら気づきました。
小円筋の基礎解剖(深掘り編)

加藤敦夫ほか:小円筋の形態とその支配神経の解剖学的解析;肩関節,2010;34巻第2号:301-304
小円筋は”上部筋束”と”下部筋束”に分けられます。
起始:肩甲骨外側縁下背側
停止:大結節後下縁
<下部筋束>
起始:棘下筋との間の筋膜組織状の中隔、肩甲骨背側
停止:上腕骨外科頸
スライドを見るとわかる通り上部筋束は直線上の走行しており、下部筋束は捻れるように走行しています。
論文で書かれているわけではなくあくまでも私の主観ですが、下部線維は棘下筋との間にある筋膜組織を介して連結があると言われています。
そのため、外旋筋として棘下筋とともに共同して強い力を発揮しているのでは無いかと考えます。
臨床では、このように小円筋には上部筋束と下部筋束に分かれているため、それぞれの筋束ごとの特徴を理解して介入することが必要となります。

筋束別の特徴
上部筋束と下部筋束では、筋形態に違いがあると言われています。以下のスライドをご覧ください。
上部筋束は羽状筋構造となっていると言われています。
羽状筋とは、筋線維が筋の長軸に対して斜めに配列されている2)筋のことです。
腱板筋には筋内腱が存在しており全てが羽状筋構造を成しています。肩甲下筋は筋内腱が多いため、多羽状筋構造とも言われています。
羽状筋は、解剖学的断面積(筋の長軸に対して直角に切断した場合の断面積)よりも生理学的断面積(筋線維の走行に対して直角に切断した場合の断面積)が大きくなる3)特徴を持っています。
膝伸展筋力と筋横断面積に有意な相関が見られた4)ことや大腿四頭筋と等尺性最大筋力には有意な相関が認められ、断面積が大きい筋ほど、相関係数が高くなる傾向が認められた5)と報告されています。
このような文献的知見から、羽状筋と紡錘状筋で解剖学的断面積が同じ場合、生理学的断面積が羽状筋で大きくなるため高い筋収縮力を発揮しやすい構造となっていることが考えられます。
では、下部筋束はどうでしょうか?下記のスライドをご覧ください。
下部筋束は紡錘状筋構造となっています。
紡錘状筋とは、筋線維が筋の長軸に対して並列に配列する2)筋のことを言います。例を出すと上腕二頭筋が代表的です。
紡錘状筋では、解剖学的断面積(筋の長軸に対して直角に切断した場合の断面積)と生理学的断面積(筋線維の走行に対して直角に切断した場合の断面積)は等しい3)と言われています。
筋線維長が増えると筋収縮速度が増加することと言われているため、紡錘状筋は筋収縮速度に優れた構造となっていると考えられます。
上部筋束は”高い筋出力”、下部筋束は”高い筋収縮速度”とそれぞれ特徴の違う役割を有していることを考えると、臨床では外旋筋としてパワーを発揮する際は上部筋束が優位に働いてくるのでは無いかと考えます。
文献的知見ではありませんが、小円筋には外旋筋としての役割以外にも腱板筋群による求心位を保つ役割もあるため、逆に下部筋束がこちらの役割を担っているのでは無いかと考えます。
上部筋束は高い筋出力が発揮される構造を構造を成していることがわかりました。ここで疑問が生じないでしょうか?

筋発揮されやすい肢位
小円筋は棘下筋とともに外旋に働きますが、特に外転90°いわゆる”2ndポジションでの外旋”で1番筋活動が多くなるようです。
私自身小円筋は3rdポジションでの外旋、棘下筋斜走線維が2ndポジションでの外旋という理解をしていました。
ですので新たな発見と驚きでした。
棘下筋は挙上角度が上昇するにつれてレバーアームが短くなるために、挙上位での外旋は小円筋が主に役割を担うようです。
これを考えると、QLSなどでの小円筋機能不全は挙上動作にも影響するほか、骨頭求心位を保つために非常に重要になるのでは無いかと考えます。
挙上位では肩甲下筋下部線維も重要になってくるため、小円筋と肩甲下筋下部線維の協調した活動が挙上動作においては重要な筋活動なのでは無いかと考えています。
臨床で腱板を促通する場合は、もちろんその肢位で収縮が入ることも大切です。
しかし、高いところで作業する方はその位置を長い時間保つ筋持久力が必要となるため、時間を考慮した腱板exも必要となってくるのでは無いかと考えています。
まとめ
今回の記事で自分がお話したかったことを下記にまとめました。
②上部筋束は”羽状筋”構造であり、高い筋収縮力を発揮することに優れている。
③下部筋束は”紡錘状筋”構造であり、収縮の速さに特化している。
④小円筋は外旋の筋活動では2nd外旋で最も働き、挙上位になるほど筋活動が高くなる。
今回は小円筋の特徴についてお話しさせていただきました。私自身もまだまだ臨床に生かしきれていない部分もあるため、更にアップデートした内容については今後お話しさせていただこうと思います。
何かご意見やアドバイスなどありましたらTwitterで直接DMなどいただけると幸いです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに!😄
引用文献
1)編集 佐志隆士ほか:改訂第2版 肩関節のMRI読影ポイントのすべて;MEDICAL VIEW,35頁,2011
2)皆川洋至ほか:腱板を構成する筋の筋内腱-筋外腱移行形態について;肩関節20巻第1号, 103ー110,1996
3)市橋則明:筋力トレーニングの基礎知識-筋力に影響する要因と筋力増加のメカニズム-;京都大学医療技術短期大学部紀要別冊 健康人間学,第 9号,33ー39,1997
4)池添冬芽ほか:加齢による大腿四頭筋の形態的特徴および筋力の変化について-高齢女性と若年女性との比較-;理学療法学,第34巻第5号,232-238,2007
5)角田直也ほか:大腿四頭筋断面積における各種競技選手の特性;体力科学,35,192-199,1986