オーバーヘッドスポーツ障害に対するリハビリテーション

こんにちは。

肩関節機能研究会の郷間@FujikataGomaです。

今回はあまり馴染みのない方も多いオーバーヘッドスポーツ障害に関する説明をしていこうと思います。

なぜこのテーマを選んだのか
・敬遠されがち
・自分には関係ないと思われがち
おそらくセラピストの大半はこの辺りを占めると思います。
そして日頃から肩関節周囲炎や術後リハビリに関わっているセラピストでも上記のような考えをお持ちの方が多いのではないでしょうか?
私は肩関節に関わるセラピストであれば、基本ポイントは押さえておかなければいけない分野であると考えます。
みなさんは40~50代の患者さんが一生投球しないと思いますか?
万歳や洗体、更衣動作ができればいいと思っていませんか?
もちろんそんなことはないですよね。
もしいつか『息子とキャッチボールしたい』『草野球に復帰したい』といったやや高めのADLを求められたときに、改めて本記事を読み返していただければ私は嬉しいです。
今回の内容に関して

普段から私のSNSをチェックしてくださっている方の中には
『なんか見たことある』
『すでに活用している』と思う人もいらっしゃるかもしれません。

もちろん肩関節に関する情報を毎日SNSに投稿していますので、私をフォローして下さっている方はタイムラインに流れてくるものを目にしたことはあるかと思います。

ですが『タイムラインに流れてくる投稿を見て臨床に活用できている人』は非常に少ないのではないでしょうか?

1ツイートは最大140文字、本記事は12,000文字以上。約100ツイートの内容を理解し、臨床に繋げるのは簡単なことではありません。

今回の内容は一度読んだだけでは中々臨床に落とし込むことができない難しめの内容も入っています。
見たことがある内容は『まだできないところ、理解てきていないところ』を、初めて見る内容は『まずは知ること』を目的に読んでみてください。

今回は非常に重要な内容の記事となっています。ぜひ読んで、知って、覚えて、臨床に活かしてみてください。

と い う こ と で
今回はオーバーヘッドスポーツ障害に対する基礎知識や評価ポイント、具体的な治療方法についてご紹介していきたいと思いますのでよろしくお願いいたします✨

郷間
一緒に学んでいきましょう♪

オーバーヘッドスポーツとは

野球やテニス,バレーボールのように投球やスマッシュ、スパイクなど拳上位での動作を要するスポーツ競技

おそらくこの認識で問題ないと思います。

このようにオーバーヘッドスポーツと一括りにしてしまうと様々なスポーツについて全て解説していかなければいけないため、今回はオーバーヘッドスポーツ障害の中でも私が最も関わりのある”投球障害肩”にフォーカスをあてて話していきたいと思います。

 

投球障害肩は投球側の肩だけでなく、対側の肩関節、股関節、肘関節、体幹、股関節、膝関節、足関節を含めた全身の連鎖運動と投球フォームの観察が必要となります。

臨床現場では『手投げ』や『肘下がり』を指摘する場面を頻繁に見かけます。

ではオーバーヘッドスポーツは本当に全身をみるべきなのでしょうか?

肩関節と全身の関係(テニスサーブ)
下肢+体幹 54%
肩関節   21%
肘関節   15%
手関節   10%       
Kibler (1995)  

肩関節と全身の関係(投球)
股関節、体幹からの力が24%減少した場合同等の力で投げるには肩の力を34%増加させる必要がある。
Kibler and Chandler (1995),Seroyer et al (2010),Sciascia and Cromwell (2012)

このように、オーバーヘッドスポーツをみるのであれば肩だけでなく全身をみる必要があります。

次に、運動連鎖についてみていきましょう。

全身の機能不全はフォームが崩れ、肩や肘などの末梢に負担がかかる可能性が出てきます。

このように、
『肩は肩だけをみても治せない』
『肘は肘だけをみても治せない』ということがわかってきます。

問診

郷間
問診は非常に重要ですね。

原則として明らかな外傷エピソードは少なくオーバーユースを基盤として発症することが多いため、環境面の不備も原因となってくることが多いです。

例えば肩を痛めて来院された中学2年生の問診例
野球歴=現中学2年生。小学1年生から初めて8年目
学校=中学大会では県内でベスト16以上
部員=17人
ポジション=ピッチャー
同ポジション要員=2人(1人は1年生)
練習量=平日週4日2時間半、休日2日土日
選手に対する期待=高校は県内強豪高校からも声がかかっていて今練習を休むことができない

上記のような選手は頻繁に来院されます。
このようなときは、選手だけに『投げてはいけない』と伝えても上手く監督に伝えられないことや理解されないことが多いです。
親御さんや監督コーチにも説明できる環境づくりを意識しましょう。

現在関わる野球少年たちの投球回数はこちらのピッチスマートを基準に行っています。

※大原則は主治医に従いましょう

MLB(メジャーリーグベースボール:Major League Baseball)は2014年に医師をはじめとした専門家の意見も取り入れたガイドライン「ピッチスマート」を発表した。これは年齢ごとに1日の球数の上限、その球数によって必要な休養日を細かく定めたものである。

日本は少年野球から全国大会が頻繁に行われ、1年中野球をする習慣があるため、身体を休める期間が少なくOveruseとなりがちです。
医師、選手本人、監督コーチ、親御さんにしっかり病状をお伝えしたうえで復帰のタイミングや漸増負荷を提案しましょう。

視診

視診は主に肩甲骨周囲のアライメント評価を行います。
特に野球選手は投球側の肩甲骨が外転下方回旋位にあることが非常に多いので確認する必要があります。

1)Winging Scapula

Winging Scapulaが陽性となる場合、前鋸筋や菱形筋、僧帽筋など肩甲骨周囲筋の筋力低下、Impingement症候群、肩関節不安感で陽性となるため、要チェックです。

2)SSD(Spine Scapula distance)

肩甲骨の内側縁と脊椎棘突起の間の距離を計測し左右差の確認が重要。1㎝以上の差は陽性。
SSDは評価としてとても重要ですが、先にも述べた通り野球選手はほぼ陽性となります。

触診

圧痛は疼痛の責任病巣の目安をつける意味で重要です。

臨床で圧痛を訴えやすい部位は上腕二頭筋長頭腱、棘下筋、小円筋が多い印象です。

圧痛はその部位に
①直接的な炎症(上腕二頭筋長頭腱炎等)
②筋攣縮や虚血性筋肉痛が生じている可能性が高いですのでしっかり評価しましょう。
小円筋は比較的痛みを訴えやすい部位でもあるので、“左右差”を確認して非投球側よりも強い痛みを訴えた場合は陽性としましょう。

全身の柔軟性評価general joint laxityカーター徴候(Carter C&Wilkinson Jの5徴候(1964)

評価項目
1.親指を手のひら側に曲げて腕まで親指が付くか?
2.指を反らせた時に腕と平行になるまで反るか?
3.肘のピンと伸ばした時まっすぐより更に反らせることができるか?15°以上反るか
4.膝をピンと伸ばした時10°以上反るか?
5.踵を床につけたまま、屈んで足首が45°以上曲がるか?

この5つのうち3つ以上当てはまった場合、『全身性関節弛緩症』と評価されます。
他にも7項目のLaxity評価もありますが、スクリーニングレベルであれば5徴候でも問題ありません。

下肢の評価

郷間
下肢の評価は必ずします。

最初に述べたように、投球は運動連鎖からなる動作です。
全身を使わず、腕の振りだけで投げる“手投げ”は、肩や肘に負担がかかります。下肢の柔軟性は投球動作を遂行する上でとても重要ですので必ずチェックしましょう。
ここでは重要な4項目を紹介します。
セルフストレッチとして指導しやすいので、問題があった場合は『次回までに〇〇°を目指して頑張ろう!』とモチベーション維持の効果も期待できますのでしっかり評価・指導しましょう。

1)SLR Angle(ラセーグ角)

Tight Hamstringを評価します。
70°以下の場合、異常として判断します。80°以上を目標にしましょう。

2)大腿筋膜張筋柔軟テスト(Ober’s Test)

今回は別法を紹介。
側臥位で非検査側の足を抱え、検査側の下肢を屈伸0°の位置から内転する。
この時、膝の内側が床につかなければ陽性となります。
臨床で評価していると通常方法では左右差が無くても、別法で評価すると左右差が顕著に表れる選手が多いです。

しっかり確認してみましょう。

3)踵部臀部間距離(HBD)

腹臥位にて踵と臀部の距離を測定します。
Tight quadricepsを判定するもので、HBD0㎝を目標にして行ってもらいます。
HBD10㎝以上の場合は、股関節の回旋異常を引き起こすため異常と判断します。

4)股関節内旋角度

股関節内旋可動域は10°以下の内旋制限がある場合は以上と判断します。

下肢・体幹の複合評価

1)トランクローテーション

四つ這いになり、片手を床の中央に置き、もう一方の手で頭を抱えます。回旋を行い、時計の針で12時と6時を目指して行います。左右差がある場合は体幹の柔軟性低下を意味するため、投球時に肩関節への過負荷が生じやすいです。

評価Point
・右手-右肘-右肩-左肩-左肘(逆もあり)をランドマークにチェックする。
・回旋左右差を確認する。
・肩甲上腕関節による制限か?肩甲胸郭関節による制限か?それとも体幹か?確認する。

2)One leg squat

頭を抱え、下肢を屈伸します。この時、Knee in toe out等、膝動揺が生じた場合はバランス機能の低下や下肢筋力の低下が示唆されます。

評価Point
・体幹動揺
・Knee in toe out
・足部動揺

3)front lunge

頭を抱え、前方へのLange動作を行います。この時One leg squat同様、Knee in toe out等、膝動揺が生じた場合はバランス機能の低下や下肢筋力の低下が示唆されます。

足部動揺が少ないにも関わらず、この動作でバランスが崩れた場合は、大殿筋やハムストリングスの運動連鎖破綻や股関節内外転筋群のunbalanceが生じている場合が多いです。

Front lungeを行う際は、下半身と上半身がタイミングよく重心移動することを意識させましょう。

評価Point
・前額面だけでなく矢状面からもチェックしましょう!
・体幹動揺
・Knee in toe out
・つま先の位置

4)side lunge

頭を抱え、前方へのLange動作を行います。

この時One leg squat同様、Knee in toe out等、膝動揺が生じた場合はバランス機能の低下や下肢筋力の低下が示唆されます。

この動作でのみバランスが崩れた場合は、大殿筋やハムストリングスの運動連鎖破綻に加え、内転筋群や外転筋の筋力低下が示唆されます。

Front lungeと同様に、下半身と上半身がタイミングよく重心移動することを意識させましょう。

評価Point
・体幹動揺
・つま先の位置
・Knee in toe out

5)片脚立位バランス


この評価はワインドアップの評価としてとても有用です。
片脚立ちが安定して投げるのと、グラつきながら投げるのでは雲泥の差です。
頭から足まで直線の軸を意識して行えているかチェックします。前額面及び矢状面でしっかり評価しましょう。

評価Point
・体幹動揺
・足部動揺
問診~下肢・体幹の複合評価までのまとめ
・機能評価だけでなく、問診から得られる情報が多い。
・オーバーヘッドスポーツは全身の運動連鎖から成り立っている。
・一部分の機能不全により、肩や肘の末梢に負担がかかりやすい。
・肩や肘に疼痛を訴えても、必ずしも疼痛部位に問題があるとは限らない。
・下肢体幹の柔軟性と安定性は必ず評価する。

ここからはオーバーヘッドスポーツで最も抑えておきたい肩関節評価のポイントと臨床における工夫について解説していきたいと思います。

肩関節の評価

郷間
できれば今回の評価は暗記できると👍です!

今回ご紹介するのは
原正文先生が執筆された『肩の障害』MB  Orthop.23(5):29-36,2010でも紹介されている原11テストを基にした10点満点の評価スコアです。
実際の原11テストはSSD(Scarula-spine distance)を加えた11点満点となりますが、今回はSSDを抜いた10項目を紹介していきたいと思います。
※SSDは上記記載

①CAT(Combined abduction test)

*目的&解説  
・肩甲上腕関節実質の外転角度を測定する。
・徒手的に肩甲骨外側縁から肩甲骨を固定してその角度を計測する方法で左右差を調べる。
*原因推測 
CATに左右差があるときは
①前下方関節包の拘縮
②肩甲下筋下部、大円筋、小円筋)の筋拘縮
③深層筋と浅層筋のunbalanceを疑いながら介入していく。

外転角の計測を肩甲上腕関節(GH)の角度としてとらえ、肩甲骨を徒手的に固定して上肢を外転し、その外転角度を計測する方法で左右差を調べます。

左右差がなければ陰性とします。

②HFT(Horizontal flexion test)

*目的&解説  
肩甲上腕関節実質の水平屈曲角度を測定する。
徒手的に肩甲骨外側縁から肩甲骨を固定してその角度を計測する方法で左右差を調べる。
*原因推測 
HFTに左右差があるときは
①後方関節包の拘縮
②腱板(棘下筋・小円筋)の筋拘縮
③深層筋と浅層筋のunbalanceを疑いながら介入していく。

水平屈曲角の計測を肩甲上腕関節(GH)の角度としてとらえ、肩甲骨を徒手的に固定して上肢を水平屈曲し、その水平屈曲角度を計測する方法で左右差を調べます。

左右差がなければ陰性とします。

③EET(Elbow extension test)

*目的&解説 
上腕三頭筋の筋力評価で
肘屈曲100°以上から伸展させ、投球側に脱力現象が生じた場合は異常所見とする。
*原因推測 
EETに異常が生じた場合は
①LHTの筋性疲労&柔軟性低下
②手投げ
③QLS柔軟性低下を疑いながら介入していく。

上腕三頭筋の筋力(脱力)評価で肘屈曲100°以上から伸展させると脱力現象が生じた場合は異常所見とします。

脱力を感じなければ陰性とします。この現象は、インナーとアウターの筋アンバランスを改善させることで経過とともに正常化しやすいです。

④EPT(Elbow push test)

 

こちらが正常(陰性)のElbow push testとなります。

では実際のElbow push testで陽性の場合はどのような反応が起きるのでしょうか?
⇩こちらの動画をご覧ください!

*目的&解説
前鋸筋の筋力テスト。
肘屈曲90°にして肘頭に対して抵抗運動をすると投球側に脱力が生じるた場合は脱力現象を異常所見とする。
*原因推測 
EPTに左右差があるときは
①前鋸筋の筋力低下
②肩甲骨上方回旋筋群活動低下
③肩甲骨下方回旋筋群活動上昇を疑いながら介入していく。

前鋸筋の筋力テストを肘屈曲90°にして肘頭に対して抵抗運動をすると投球側に脱力が生じることがあります。
これをテストとし、脱力現象を異常所見とします。
脱力を感じなければ陰性とします。
この現象もEET同様にインナーとアウターバランスを改善させることで経過とともに正常化しやすいです。

⑤Loose test:下方動揺性(Sulcus test)

*方法
・座位および端座位で肩周囲の力を抜かせる。
・上肢は内外旋中間位とし、患者の肘と前腕を保持し下方に牽引する。
・牽引した際に肩峰の輪郭がはっきりとするほど肩峰下に陥没ができると陽性。
・内旋位、外旋位でも陽性の場合はloose shoulderと呼ばれ多方向性動揺肩を示唆します。

⑤Loose test:前後方向動揺性Load and sift test

検査方法
・座位および端座位で肩の力を抜かせる。
・検査者は烏口突起と肩峰棘を把持するように肩甲骨を固定し、もう一方の手で上腕骨頭を保持しつつ関節窩に押し当てながら前後方向にストレスをかけ動揺性を評価する。
・骨頭の25%以内の変位をnormalとし、25~50%の変位をgrade1、関節窩縁に乗り上げるがすぐに戻るものをgrade2、整復されないものをgrade3とします。

下方動揺性(Sulcus test)だけでなく、前後方向動揺性(Load and sift test)も評価する。全てにLooseを認めなければ陰性とします。

⑥HERT(Hyper external rotation test)

*目的&解説
投球時の疼痛再現性徒手検査の一つ。
背臥位で2nd外旋強制を行い、関節包や関節内からの疼痛や第二肩関節の疼痛を評価する。

*Point
肩甲骨固定の有無で痛みに変化がある場合もあるため要チェック

*原因推測 
HERT陽性の場合は
①アクセレレーションでの投球時痛が生じやすい
②姿勢不良(胸椎伸展可動域低下)
③下肢体幹筋力低下(いわゆる手投げ)を疑いながら介入していく。

疼痛の再現性徒手検査の一つで背臥位2ERの強制を行い関節包や関節内からの疼痛、第二肩関節からの疼痛を評価します。痛みがなければ陰性とします。

⑦Impingement Test:Neer test

*目的&解説
基本的には肘伸展位、肩関節内旋位で他動屈曲を行い、肩峰下に痛みが生じた場合はImpingement陽性。
*臨床評価でのPoint*
屈曲内旋でImpingementが無くても、90°外転位(2nd)や中間位で内旋を行うと痛みを訴える症例もしばしばみられる。
*原因推測
①肩下方軟部組織の伸張性低下
②肩峰下滑液包~棘上筋間の癒着

⑦Impingement Test:Hawkins sign

*目的&解説
基本的には90°屈曲位(3rd)で他動内旋を行い、肩峰下に痛みが生じた場合はImpingement陽性。

*臨床評価でのPoint*
3rd内旋のみImpingementが無くても、90°外転位(2nd)や中間位で内旋を行うと痛みを訴える症例もしばしばみられる。

*原因推測
①棘下筋・小円筋の弾性低下
②後下関節上腕靭帯(PIGHL)の拘縮を疑いながら介入していく。

Neer、Hawkins、ellmanなどの手法を用いて評価します。
Impingementがみられなければ1点とします。

⑧徒手筋力検査:棘上筋(Empty can test & Full can test)

*目的&解説
肩甲骨面上で肩外転30°で抵抗に逆らって挙上します。
内旋位で行うもの=Empty can test
外旋位で行うもの=Full can test
肩内旋位で行うEmpty can testはLHBの代償を除外させることができるため有用と考えています。

*Point*
・選手の場合、MMTのみだと筋力低下の有無が評価しきれないため、左右差行う。
・痛みの有無も必ず確認する。

*原因推測
①棘上筋筋力低下
②深層筋と浅層筋のunbalance

⑨徒手筋力検査:棘下筋

*目的&解説
下垂位外旋運動に抵抗する。
*Point*
・選手の場合、MMTのみだと筋力低下の有無が評価しきれないため、左右差行う。
・痛みの有無も必ず確認する。
*目的&解説
下垂位外旋運動に抵抗する。
*Point*
・選手の場合、MMTのみだと筋力低下の有無が評価しきれないため、左右差行う。
・痛みの有無も必ず確認する。
*原因推測
①棘下筋筋力低下
②深層筋と浅層筋のunbalance

⑩徒手筋力検査:肩甲下筋

*目的&解説
下垂位内旋運動に抵抗する。

*Point*
・選手の場合、MMTのみだと筋力低下の有無が評価しきれないため、左右差行う。
・痛みの有無も必ず確認する。

*原因推測
①肩甲下筋筋力低下
②深層筋と浅層筋のunbalance

私の所属施設では以上の10項目のうち9項目以上問題がなければ投球を開始としています。
オーバーヘッドスポーツの中でも投球障害肩においては特に上記テストを用いて定量的に評価することで選手、医療者間でのフィードバックも行い易く、とても重宝しているテストとなっています。

もしオーバーヘッドスポーツ障害に携わる機会があるけど何から評価していいかわからない!という方は参考にしてみてください✨

オーバーヘッドスポーツ障害に対するリハビリテーション

郷間
ラストスパートです!

それではここからはオーバーヘッドスポーツ障害に対するリハビリテーションについて解説していきます。
私が直近3年間で関わらせてもらった80~90人前後の投球障害肩の選手で最も多い陽性テストは

①CAT
②HFT
③Impingement
④HERT

これら4つのテストとなります。
もちろんLoose testやEET、EPT、SSP、ISP、SSCが陽性の選手はたくさんいますが、上記4項目が圧倒的です。
そして、この4項目を介入することで他のテストも陰性になるケースを臨床現場でも多く経験しています。

そこで、今回は陽性になることが多い4つのテストの問題点にフォーカスをあててお話をしていきたいと思います。

え?治療法じゃないの?と疑問に思った方も多いと思います。

治療方法はセラピストによって無限に選択肢はありますよね。
セラピストによっても力や体格も違いますし、患者さんによっても状況が全く異なります。

ですので私は『これが絶対よく治る方法だよ!!』というアドバイスはできません。
ですが『ここが問題かもしれないよ!!』というアドバイスはできます!
私の治療法はあくまで参考として受け流してもらっても結構です✨

問題点さえわかれば、あとは皆さんの培った技術で患者さんは治ると信じています💪

それではさっそく確認していきましょう!

①CAT(Combined abduction test)

CATの治療で最も重要なことは
肩甲上腕関節”実質”の外転角度を拡大すること』であり、
肩甲骨代償を伴う外転角度を拡大することではありません。

では外転運動を制限する組織は何か?
そうです。前額面から見た肩関節内外転軸の下方を通過する組織です。
その中でも、私が重点的にアプローチしている組織は
肩甲下筋下部線維、大円筋、小円筋、上腕三頭筋長頭腱です。

肩甲下筋はなんとなくイメージできると思いますので今回は割愛させていただきます。

皆さんは、挙上時の腋窩周囲の解剖位置関係ってイメージできますか?
昔、後輩に『挙上した状態の解剖書のイラストが見つからなくて全くイメージできません』と言われました💦
挙上時の大円筋、小円筋、上腕三頭筋長頭腱の位置関係は以下のようになります。

これを見てもらうとイメージできると思いますが、小円筋、大円筋、長頭腱は挙上時に肩甲上腕関節の下方をハンモックで包み込むように位置していることがわかります。
このハンモックが硬いとどのような現象が生じるか?
答えは

外転、挙上時に骨頭が肩峰下に衝突する。

衝突しているのも関わらず無理に外転、挙上を繰り返し肩峰下滑液包に炎症が生じる。

結果、痛みが生じる。

といったように負のスパイラルから抜けだけません。
ここはしっかり改善しておきたい組織ですね。

ちなみに参考までにですが、私の場合は

①ダイレクトマッサージ(軽く)
②徒手操作(それぞれの筋間に指尖を入れて動きを出す)
③選択的自動収縮

の手順で行うことが多いです。
ポイントとしては、小円筋や上腕三頭筋は関節包にも一部付着しているため、③の選択的自動収縮を入れ、関節包に対する伸張刺激も加えることです。

②HFT(Horizontal flexion test)

HFTは文字通り水平屈曲を評価する方法です。
では、水平屈曲運動の際、どのような組織が伸張するのでしょう?
水平屈曲運動の際に肩関節後方に位置する組織は以下の通りです。

水平屈曲に関与する組織
上部:三角筋後部線維、棘下筋横走線維、後方関節包

中部:三角筋後部線維、棘下筋横走&斜走線維、後方関節包

下部:三角筋後部線維、棘下筋斜走線維、小円筋、後方関節包、PIGHL(後下関節上腕靭帯)

3つの描出で、若干組織が変わったことにお気づきだと思います。
この組織の位置関係さえわかればあとは簡単です!

☑上部を評価➡水平屈曲位から少し肘を下げる(屈曲70~80°前後)
☑中部を評価➡そのままシンプルな水平屈曲。
☑下部を評価➡水平屈曲位から少し肘を上げる(屈曲100~110°前後)

3つとも硬ければ全てやってください。
1種類だけ硬ければ、そのポジションに関与する組織を介入してみてください。
何も考えずに水平屈曲可動域を拡大するよりも格段に改善していくはずです。

あくまで参考ですが、HFTの可動域拡大に対するアプローチ動画をあげておきます。

③Impingement(衝突)

3つ目は言わずと知れたImpingement(衝突)です。

Neer impingement testが陽性の場合はCATの拡大を行うことで改善がみられることが多いです。
もしNeerが陽性の場合は、もう一度CATの評価をしてみてください☆

では、今回はHawkins testについて解説していきます。
Hawkins Testの動きをエコーで可視化した際の肩峰下Impingementをご覧ください。

Hawkins testの際、このようにImpingementを繰り返すと肩峰下滑液包炎や腱板損傷となる可能性が高くなるため注意が必要です。

エコーを使用できる環境の方は是非エコーを用いて評価してみてください。
後下方組織の柔軟性が低下した状態で、Hawkins testを行うと、骨頭中心は前上方へと偏位します。
骨頭が前上方に偏位すると、前上方に位置する烏口突起-烏口肩峰靭帯-肩峰で構成されるC-A archでImpingementが生じます

こちらも参考までにですが、

烏口下Impingementの場合は棘下筋,後方関節包
肩峰下Impingementの場合は小円筋, PIGHL

の柔軟性低下の関与を考えています。

では皆さん、こちらの症例の動画をみてください。⇩⇩

こちらの選手(投球障害肩の患者)は介入前では内旋(骨頭が←方向へ回旋)に伴い肩峰にImpingementしているのがわかります。

今回、こちらの選手に対して以下の手順を行いました。

介入手順と方法
①エコー下にて骨頭が肩峰側へ前上方偏位していることを確認
②肩峰から対角線上に位置する小円筋とPIGHLを疑う
③エコーガイド下で小円筋の筋腹~付着部(大結節IF)を描出
④示指と中指で小円筋の筋間に指尖を入れる
⑤上記④の操作のまま外転90度~肩甲骨面上90度~屈曲90度で自動内外旋運動を2~3分反復
を行い骨頭の前上方変位が改善しました。

私が実施した小円筋描出と治療は以下の動画になります。

エコーを使用できれば問題点を絞ることが容易かつ迅速ではありますが、エコーが無くても小円筋かな?棘下筋かな?それとも関節包靭帯?といった問題点の予測は可能です!
ぜひ明日からやってみてください!

でも、ほかにもImpingementの要素ってたくさんありますよね...

肩峰下Impingementに対する徒手療法の全ては、ここでは書ききれないくらい膨大になってしまいますので割愛させていただきます。

④HERT(Hyper external rotation test)

HERTで痛みを訴える選手は非常多いです。
特に、初回で痛みを訴えない選手はほとんどいない印象です。

HERTで痛みが生じる場合は以下の項目にチェックしてみましょう!

HERT陽性時のcheckpoint
胸椎前弯可動域
肩甲骨アライメント
組織自体の損傷
下肢体幹機能不全(いわゆる手投げ) 

胸椎前弯可動域が原因の場合、胸椎を伸展させた状態でテストを行うだけでも痛みが消失することが多いです。
この場合はCAT&DOGなどで胸椎可動性の獲得を推奨しています。

肩甲骨アライメントの不良が原因の場合は、先ほどの『肩峰下Impingementに対する運動療法』から僧帽筋と前鋸筋の促通、菱形筋と肩甲挙筋のストレッチを確認してみてください。
一概には言えませんが、肩甲骨のマルアライメント=肩甲骨が下方回旋していることが多いです。
特に投球障害肩で来院される選手は投球側の肩甲骨が外転・下制・下方回旋アライメントを呈していることが非常に多いです。

HERTが陽性の場合、組織自体の損傷(肩峰下滑液包炎、上腕二頭筋長頭腱炎、etc...)が原因となることも多いです。
あなたが評価して生じた疼痛は今すぐ改善できる痛みなのか、器質的に損傷していて組織修復を待つべき痛みなのかをしっかり把握しましょう。

たとえHERTの痛みが改善しなかったとしても、その原因が炎症の場合は無理に動かしまっては逆効果となります。
しっかり見極めて、周辺組織の機能改善に徹底してみるのもいかがでしょうか?

最後に、HERTでは下肢体幹機能不全(いわゆる手投げ)が原因となる場合もあります。
なぜならば、オーバーヘッドスポーツは全身で遂行する動作だからです。
もし下肢体幹が硬ければ、肩関節に過剰な可動域が要求されます。
もし下肢体幹筋力が弱ければ、肩関節に過剰な筋力が要求されます。
これがオーバーヘッドスポーツ障害の基本的な考え方です。

HERTは様々な原因が絡み合って生じる痛みであることが多いため、個人的には一番ややこしいと思っています💦

ですが、一つずつ紐解いていくことで改善する可能性は高まりますので、あきらめずに治療していきましょう!

ということで今回はおしまいにしたいと思います(^-^)ノ

今後も皆さんに有益な情報がお届けできるよう尽力いたします!

以上、藤沢肩関節機能研究会 郷間でした(^ ^)

参考文献・参考書籍

・松久孝行:投球のバイオメカ二クスからみた肩関節障害のリハビリテーションと予防.臨床スポーツ医学:2001;2(18):165-171
・原正文:Ⅱ部位別疾患 肩の障害.MB Orthop:2010;23(5):29-36
・元木純:野球か他の理学療法における臨床推論.理学療法:2016;33(8):687-696
・児玉雄二:野球におけるコアスタビリティトレーニングの実際.理学療法:2017;34(11):973-981
・林典雄:運動療法のための運動器超音波機能解剖 拘縮治療との接点 

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