
今回は肩関節の可動域制限に関与する軟部組織を見つけ出すうえで
必要な3つのステップをご紹介したいと思います。
肩関節は球関節であり、複雑で複合的な運動が可能な人体最大の関節です。

前額面では内転-外転運動
矢状面では屈曲-伸展運動
水平面では内旋-外旋運動
これらを行なうため、可動域制限を考えるのも一筋縄にはいきません。
多くのセラピストが肩関節に苦手意識を抱くのも理解できます。
ですが今回ご紹介する3つのステップを順番に理解することで、こちらの記事を読み終えることには肩関節の苦手意識が多少は払拭できるかもしれません。
また、これから臨床実習を控えている学生さんも本記事の内容を理解して実習に挑むことで『お、今回の実習生さんはよく理解できているなぁ。』と指導者も驚くかもしれません。
たとえば、私の臨床見学に入るセラピストや学生さんには『この患者さんは下垂位外旋の制限が顕著ですね、では軟部組織だとしたらどんな筋や靭帯が影響していると思いますか?』といった質問を必ずしています。
一発目で『棘上筋前部線維、肩甲下筋上部線維、大胸筋鎖骨部線維、小胸筋延長腱、烏口上腕靭帯、上関節上腕靭帯です。』と答えてくれる方は流石にいませんが、少し勉強している方であれば1つや2つの組織は答えられるのではないでしょうか。(みなさんはいくつわかりましたか?)
ここで“全くわからない”と答えた方は恐らく肩関節に対して苦手意識が強い人でしょう。
では膝関節で考えてみてください。
『膝伸展の制限因子(関与している組織)は?』
恐らくほとんどの方が『ハムストリングスや腓腹筋、膝窩筋の伸張性低下』と答えられると思います。
それはみなさんが膝関節の関節運動の特徴と膝屈伸軸の後方に位置する組織が上記の筋であることを知っているからではないでしょうか?
肩関節も膝関節と大きな違いはありません。
ただほんの少しだけ関節運動が複雑なだけです。
ということで今回はステップ1~3は以下のような内容で順序立てて解説していきますのでよろしくお願いたします。
ステップ① 肩関節における軟部組織の位置関係を把握する
ステップ② 可動域制限を肢位毎に分解する
ステップ③ 肢位毎の制限に関与する軟部組織を理解する
では早速ステップ①から解説していきたいと思います。
①肩関節における軟部組織の位置関係を把握

こちらは右肩関節を矢状面からみた図になります。
まずは肩関節を上方、前上方、前方、前下方、下方、後下方、後方、後上方の8方向に分けて考えます。
ではこれらに腱板筋群4つを加えてみましょう。