鎖骨骨折~合併症~

みなさん初めまして!
肩研サロンメンバーの櫻井(サクライ)です。
簡単に自己紹介させてください😊
・鹿児島県在住
25
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・趣味 ➡ キャンプ
・好きなアーティスト ➡ ONE OK ROCK
Instagram:@d.sakurai0501
よろしくお願いします!!

 

さて今回、研究生の神藤さんよりお話をいただき、鎖骨骨折について共同で記事を書かせていただくことになりました。
初めて記事を書くので拙い文章かと思いますがよろしければ最後までお付き合いください。

 

さてさて今回のテーマは・・・
“鎖骨骨折の合併症”についてです。

 一口に合併症といっても種類が2つあります。

①ある病気が原因となって起こる別の病気

②手術や検査などのあと、それらがもとになって起こる別の病気

これは鎖骨骨折以外の疾患でも言えることです。
鎖骨骨折の患者さんに介入していて

骨折部以外にも疼痛がある

 

なかなか可動域が改善しない

 

受傷後(術後)から肩周囲のしびれが続いてる

 

と感じたことがある方はいませんか??
もしかすると鎖骨骨折以外の病態が生じているかもしれません。
そういった悩みを抱えているセラピストは少なからずいるのではないでしょうか。

 

この記事は

鎖骨骨折の合併症ってなにがあるの??

なんで骨折部痛以外の症状が出るの??

骨折部以外にどこに気を付けて介入したらいいの??

 

などの疑問を持っている方にオススメです!!
今回は鎖骨骨折を受傷してしまうことで起こる合併症と手術の最中や術後に起こってしまう合併症を紹介していきたいと思います。

 もし皆さんが鎖骨骨折の保存や手術の患者さんを担当された時に、骨折部痛以外の症状があった際、この記事の内容から少しでも合併症を特定するヒントに繋がれば幸いです。

ではでは本題に入っていきましょう!

肩甲帯周囲の合併損傷

ざっくりとした題ですが、交通事故やスポーツ、転倒などの外力により生じることの多い鎖骨骨折では肩甲帯周囲の骨、靱帯の損傷が生じます。
画像所見で鎖骨骨折に気を取られがちで合併損傷が見逃されるケースもあるようなので、セラピストもしっかり画像と臨床症状に注意して介入する必要があります。

その中でも、経験したことはないですが論文や症例報告でよく見かける合併損傷を2つほど紹介します。

その前にみなさんは
肩上方懸垂複合体(SSSC:superior shoulder suspensory complex)
というものを聞いたことがありますか??
これはGoss²⁾が提唱したもので肩甲骨関節窩、烏口突起、烏口鎖骨靱帯、鎖骨遠位部、肩鎖関節、肩峰によるリング状の複合体のことを言います。
上方 ➡ 鎖骨骨幹部
下方 ➡ 肩甲骨体部により支えられており、これらの複合体の安定により体幹・肩甲帯・上肢の関係性が維持されているという概念です。
この中で1ヵ所が破綻してもその機能は保たれますが、2ヵ所以上での破綻は複合体の不安定性をもたらし、転位も大きくなるとされています。
その中で今回は肩甲骨と烏口鎖骨靱帯の損傷について紹介します。

肩甲骨骨折

鎖骨骨折に合併する多発骨折(2本以上の骨を同時に骨折すること)として浮かんでくるのが肩甲骨骨折です。
肩甲帯骨折自体が肩甲帯周辺の骨折の3~5%、全骨折の0.4~1%とされており稀な骨折です。¹⁾

さらに肩甲骨骨折の90%以上は転位がない、もしくは小さい¹⁾とされていてあまり重要視はされないかもしれません。

しかし、変形治癒や偽関節に伴う腱板機能不全、肩甲胸郭関節異常運動、インピンジメントは強固な疼痛や機能障害を生じる原因となる¹⁾ため甘く見るのは禁物です。

烏口鎖骨靱帯断裂

烏口鎖骨靱帯の断裂の有無はNeer分類やCraig分類で鎖骨骨折の手術適応の判断に使用されることことが多く、上記のSSSCにも含まれ肩甲帯周囲の安定化機構として重要になります。
Neer分類TypeⅡ(烏口鎖骨靱帯の断裂があるもの)に分類される”転移の大きな不安定型の鎖骨遠位端骨折は骨癒合が得られにくい”とされており、手術適応となります。

偽関節

鎖骨骨折に限らず、骨折では偽関節が生じるリスクがあります。

偽関節とは、骨折の治癒に必要とされる期間を過ぎても骨癒合がみられず、異可動性を示すことを言います。
原因としては不十分な固定や血流障害、全身状態(栄養状態など)の不良によることが多いです。

鎖骨骨折の骨癒合率
喜久里ら³⁾ ➡ 癒合率95.6%

岩田ら⁴⁾  ➡ 癒合率94%(鎖骨骨幹部骨折のみ対象)

上記の通り良好な骨癒合率を示しています!!
このことからも鎖骨骨折が保存療法が選択されることが多いというのが頷けますね。

 

 

このように従来は偽関節発生率が手術と比較して保存療法の方が低いとされてきました。
しかし、2013年にRobinson⁵⁾は転位のある鎖骨骨幹部骨折の治療成績について偽関節率は観血的治療が1.2%であるのに対して、保存療法が14.1%であると報告しています。
つまりは手術の方が偽関節の発生率が低いみたいです!!
このことから最近は手術を選択することが増えてきているようです。

血管障害

骨折における血管の障害は、受傷時に損傷・狭窄するものや手術に伴う侵襲によって損傷する場合があります。
鎖骨骨折において、損傷する血管として論文でよく目にするのは鎖骨下動静脈です!!

上の画像のように鎖骨の深層、第1肋骨の表層を通過します。骨折時にできた血腫や骨片、第1肋骨により狭窄されたり、鋭利な骨片により障害を受けることがあります。
鎖骨下動静脈損傷の頻度自体は成人鈍的外傷のうち、3.1%⁶⁾と意外にも高くありません。

 

理由は2つ考えられています。

①鎖骨骨折による骨片遠位端は重力により前下方に牽引され、近位端は僧帽筋、胸鎖乳突筋により後上方へ牽引されるため鋭利な骨端による損傷が少ない。

鎖骨下筋深頸筋膜が鎖骨下に付着しているため、鋭利な骨端と血管の間の隔壁として働くためとされています。⁷⁾

 

症状として動脈の障害では・・・
障害側上肢の虚血症状(しびれ、冷感、疼痛、皮膚血色不良など)、上腕動脈以下の触知困難など

静脈の障害では・・・
障害側上肢の腫脹、しびれ、表在静脈の拡張やうっ血性の色調変化などが挙げられます。

神経障害

神経も血管と同様に受傷時に損傷・狭窄するものや手術に伴う侵襲によって損傷する場合があります。
鎖骨骨折に伴う神経障害として腕神経叢鎖骨上神経がよく知られています。

 

 

腕神経叢の中でもどの神経が障害されることが多いのか、調べてみたんですがはっきりとした記述は見当たらなかったです😅
ご存じの方はぜひDMで教えてください🙏

先ほど紹介した鎖骨下動静脈と似たような経路を通るため、受傷機転も同様です。
骨折時にできた血腫や骨片、第1肋骨により狭窄されたり、鋭利な骨片により障害を受けることがあります。

 

腕神経叢損傷の症状としては・・・
各神経により支配される筋の筋力低下、筋萎縮、感覚障害(しびれなどの異常感覚、感覚鈍麻)などが挙げられます。

まとめ

◆鎖骨骨折の合併症として、肩甲帯周囲の多発骨折・靱帯損傷、偽関節、血管損傷、神経損傷などが挙げられる (細かく言うとまだあります!)

◆骨折部痛以外の症状が出ればこれらの合併症を疑う必要がある

◆これらの合併症の可能性を考慮した上で評価、介入する必要がある

いかがでしたか??
ここまで鎖骨骨折の合併症について簡単ではありますがまとめてみました。
もちろんここに記しているもの以外にも合併症は存在します。

 

鎖骨骨折の患者さんに介入し、なかなか痛みがとれない、可動域が改善しない、骨折部痛以外の症状がある。そんな悩みがあるセラピストのみなさんの介入の一助になれれば幸いです。

拙い文章に最後までお付き合いいただきありがとうございました。
修正点やアドバイス等ありましたらDMしていただけると幸いです。

ご拝読ありがとうございました。

参考文献

1)池辺智史:肩甲骨骨折の治療経験.2018.整形外科と災害外科.67 (4);853~856
2)Goss TP:J Orthop Trauma.1993. 7;99~106
3)喜久里教昌:当院における鎖骨骨折に対する保存的治療の検討.2008.整形外科と災害外科.57(3);466~469
4)岩田圭生:鎖骨中1/3骨折に対する保存療法の治療成績.2006.肩関節.30巻 第2号 265~268
5)Robinson, C, M,.:Open reduction and plate fixation versus nonoperative treatment for displaced midshaft clavicular fractures:amulticenter,random-ized,controlled trial. j. Bone Joint Surg. Am., 95:1576-1584,2013
6)横野良典:第一肋骨骨折に合併し、遅発性に大量血胸を来した鎖骨下静脈損傷の一例.日外傷会誌.2020.34巻3号 75~78
7)廣岡茂樹:外傷性静脈型胸郭出口症候群の治療経験.2013.静脈学.24(3) 323~326

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