
皆さんこんにちは!肩関節機能研究会 研究生の神藤(かんとう)です!
今回の記事では予定通り鎖骨骨折への治療介入について書いていきたいと思います!
序論として書いた前回の私の記事は不足している部分も多くありました。
そこで、肩研サロンメンバーの櫻井さん(instagram)が、鎖骨骨折の合併症について記事を書いてくださり、補足してくれました!
合わせて読んで頂けるとより分かりやすいかなと思います。
ということで私は張り切って、治療介入に関する記事を書いていきます!
今回は私自身の臨床で比較的多く経験した、鎖骨中1/3骨折(骨幹部骨折)を呈し、保存療法の適応となった症例の場合に絞って書いていこうと思います。
修復過程とリハの進め方
鎖骨骨折の保存療法では骨折部や受傷時に損傷した軟部組織の、修復過程をベースに治療を考えていくことが大事になってきます!
鎖骨骨幹部骨折では喜久里ら1)によると、転移なしの場合平均癒合期間は5.7週であったと報告されています。その他の教材でも4〜6週と記載されている物が多く見られました。
仮骨形成されていくまではクラビクルバンド等により固定され、肩関節屈曲・外転90°以下といった制限が設けられることが、基本的な考えとなっているかと思います。
この可動域制限を設ける理由として、以下のような理由挙げられるかと思います。
鎖骨の上肢挙上時の動態として、下の図のような動態が認められると報告されています。2)
このような鎖骨の動態を認めるため、骨癒合が不十分な時期に90°以上の肩関節挙上をしてしまうことによる骨折部への剪断力が加わってしまうと、転位・偽関節のリスクとなるため制限を設けているのだと考えます。
この制限が解除されるまでは、肩甲骨の代償動作を制限することが重要となります。
肩甲上腕関節の評価の際は下記スライドのようなleast-packed肢位で、肩甲骨と上腕骨頭を触知しながら行うと良いです。
least-packed positionで肩関節外・内旋を行い上腕骨頭の異常な動きが触知されたら、肩甲骨の代償動作が考えられます。
また、肩甲上腕関節の可動性維持のためにもstooping exの実施も指導するようにしています。
このような方法で、肩甲骨の代償を抑えながら肩甲上腕関節運動をすることで拘縮予防をしていきます。
僕はセルフexでのstooping exでは評価時に確認できた挙上角度より、気持ち少なめで動かすように指導しています。
なぜかというとあまり痛みが強くないケースでは、挙上制限を守ることができずに動かしすぎてしまう方もいるためです。
過剰に動かしてしまうと前述したように鎖骨骨折部への剪断力が加わってしまい、仮骨形成を遷延化させてしまうリスクが有るため、そのようなセルフexの方法を伝えています。
医師と相談しながらこの3点の説明を患者さんにしっかり伝えることが重要だと考えています。
『外傷』or『固定』
鎖骨骨折では受傷時の『外傷』により損傷した組織の問題と、『固定』により制限された動作による問題に分けて捉えて、二次的なROM制限の要因を予想することが重要かと思います。
今回はこの2つの問題に分けて考えてみようと思います!
外傷による問題点に対する介入
鎖骨骨折受傷時の外傷によって肩関節外側の軟部組織や腱板へのストレスが生じている可能性を考慮する必要があります。
特に三角筋が損傷しやすいとされており、三角筋が損傷することで以下のような問題点が生じます。
・三角筋下滑液包の滑動性低下
・三角筋と隣接している筋(上腕二頭筋,上腕三頭筋等)との筋間の滑動性
これらの問題点により生じうる肩関節内転制限は夜間痛や二次的な肩関節可動域につながるため、注意が必要です!
それぞれの評価・アプローチとしては、
三角筋の筋線維に対して垂直方向への滑走が出ない場合は、三角筋下滑液包での癒着が生じ始めている状態だと考えます。
そのため、この評価動作を反復することや、三角筋中部線維の起始部を徒手的に圧迫することで、肩関節内転制限の予防をすると良いかと思います。
三角筋を把持してlift-offした状態で上腕二頭筋、上腕三頭筋の筋収縮を促すことで、三角筋下での滑走が生じ、連結障害の改善につながるアプローチだと考えています。
このように、損傷組織への積極的なマッサージは炎症期では避け、組織間の癒着予防をすることが重要になって来ます!
固定による問題点に対する介入
鎖骨骨折では前述しているように、クラビクルバンドや三角巾により、肩甲骨内転位での固定をしています。
その固定により、僧帽筋・広背筋・菱形筋等の筋柔軟性が低下していることが考えられます。
これにより生じる問題点として、以下のものが挙げられるかと思います。
・上部体幹の回旋制限
・肩甲上腕リズムの不良
肩甲上腕リズムの不整があることで、肩関節自動挙上運動時に肩関節周囲筋の過活動の原因になります。
そのため、仮骨形成の時期に合わせて、上記筋群の筋柔軟性維持を目的としたアプローチが必要になりますね!
仮骨形成が不十分で挙上制限が設けられている時期ではこのようなエクササイズを実施しています。
腹部に両手部を当て、回旋側の股関節に荷重を乗せながら体幹の回旋をします。両上肢は体幹の回旋に追従するように動かしていきます。その他にもこの時期には菱形筋,僧帽筋,広背筋の起始部への徒手的な圧迫によるストレッチも行っています。
仮骨形成が認められ、医師からの90°以上の挙上許可が得られた場合、次のような方法に移行しています。
筋間への徒手的圧迫に加え、上部体幹の回旋に追従するように下部体幹が回旋をアシストしています。
肩甲骨の上方回旋も誘導ができ、肩甲上腕リズムの再学習にも有効であると考えられています。
まとめ
・『外傷』による問題点に対しては、連結障害・癒着や炎症の遷延化の予防していく。
・『固定』による問題点に対しては、体幹回旋制限・短縮位固定による拘縮を予防し、二次的な肩関節可動域制限が生じてしまわないように介入していく。
いかがだったでしょうか?
今回の記事では僕自身が鎖骨骨折保存療法の際に、意識している点を書かせていただきました。
偽関節等の合併症や二次的な肩関節可動域制限を予防するためにも、この記事の範囲の知識は大事になってくるかなと思います!
まだまだ僕自身経験も浅く、至らぬ点が多いかと思いますので、アドバイスや修正点があればDM等でご教授頂けたら幸いです!
ご拝読ありがとうございました!
参考文献
1)喜久里教昌:当院における鎖骨骨折に対する保存的治療の検討.2008.整形外科と災害外科.57(3),pp466-469
2)Fung M, Kato S, Barrance PJ, Elias JJ, McFarland EG, Nobuhara K, Chao EY. Scapular and clavicular kinematics during humeral elevation: a study with cadavers. J Shoulder Elbow Surg. 2001 May-Jun;10(3):278-85.
3)福島 秀晃:運動肢位の変化と肩関節周囲炎の筋活動について.関西理学.17:3-16,2017.pp1-16
4)Magee DJ: Orthopedic Physical Assesment, 3rd ed. WB Saunders, Philadelphia, 1997, pp175-246
5)織田 薫:鎖骨骨折に対する的確・迅速な臨床推論のポイント.理学療法.28巻1号.2011,1月.pp108-114
6)Ludewig PM, Phadke V, Braman JP, Hassett DR, Cieminski CJ, LaPrade RF. Motion of the shoulder complex during multiplanar humeral elevation. J Bone Joint Surg Am. 2009 Feb;91(2):378-89.
7)MOSELEY, H. F. D.M.3 The Clavicle, Clinical Orthopaedics and Related Research:May/June1968 - Volume 58-Issue-p17-28