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突然ですが皆さんは臨床に入る前に画像情報を収集するよう意識していますか?
私は余程の理由がない限りは必ず画像を確認してから介入するようにしています。
私が画像情報を収集する理由は主に2つあります。
②理学所見との擦り合わせ 介入前に事前情報を得ることで、理学療法評価をしながら問題像を考察しやすいため
そもそもレントゲンとはどういったものなのでしょうか?
レントゲン写真とはX線が照射され、透過・吸収の差を白黒の濃淡の変化で表したものです。 基本的にX線が透過した部分は黒く、吸収された部分は白く投影されます。
レントゲン画像はCT・MR画像と同様に単一の像ではなく複数の像から組織を評価します。
では早速、正面RoutineAPから解説します。
正面RoutineAP像は身体に対して”真正面から撮影”するものです。 最もポピュラーなレントゲン画像ですね。
RoutineAPでは上腕骨近位端骨折や肩関節・肩鎖関節脱臼など多くの病態のスクリーニング評価として用いられます。
Routine(ルーティン)という言葉の通りほとんどの上肢疾患患者のレントゲンの1つとして含まれています。
RoutineAPではこのように骨輪郭が投影されます。
後述するTrueAP像とこちらのRoutineAP像は非常に画像が似ていますがRoutineAPの場合は骨頭と関節窩が”重なっている”のが特徴です。
本来、肩甲骨は身体に対して約30°内旋していますので、真正面から撮影をすると上腕骨と肩甲骨が重なるというわけですね。
RoutineAPでは大きく分けて 1.肩鎖関節 2.上腕骨頭 3.肩甲骨関節窩 これら3部分を意識して確認するようにしています。
・肩鎖関節の脱臼の有無 ・鎖骨の骨折 ・骨変化(変性・変形)の有無 特に肩関節疾患と思いきや、肩鎖関節周囲の病変というケースも少なくありません。
特に凍結肩(癒着性関節包炎)による拘縮では肩甲上腕関節運動が制限されるため、肩甲上腕関節以外(肩甲胸郭関節や肩鎖関節)の過用を余儀なくされます。
RoutineAP像があるのであれば肩鎖関節周囲の病変も必ずみることをお勧めします。
・骨折の有無 ・骨変化(硬化・透亮像)の有無 ・石灰化 まず目が行くのは上腕骨ですよね。
上腕骨外科頸骨折、解剖頸骨折、大結節骨折、小結節骨折などでは必ずチェックすべき部分になります。 また、肩峰下インピンジメントの繰り返しにより大結節の上縁が変性(白くなる)する例も多いので大結節部の骨変化はしっかりと確認しましょう。
・関節窩骨折の有無 ・脱臼と脱臼骨折の有無 ・烏口突起骨折の有無
補足で、烏口突起先端部の骨変化もチェックしましょう。 多いのが烏口突起と上腕骨小結節部がセットとなった骨変化です。 その場は烏口下インピンジメントが生じていることも疑いながら理学療法評価を行いましょう。
こちらは画像の通りです。 ・上腕骨近位端骨折 ・肩関節前方脱臼 ・肩鎖関節脱臼 疾患の特徴などはまた別の場を設けて解説させていただきます(^^)
正面TrueAP像は”肩甲上腕関節に対して正面から撮影”するものです。 肩関節のレントゲンのイメージと言えばこちらの画像が頭に浮かんでくる人も多いのではないでしょうか。
ちなみにTrue(トゥルー)とは”真の”や”本来の”という意味があります。
TrueAPではこのように骨輪郭が投影されます。
先述したRoutineAP像とこちらのTrueAP像は非常に画像が似ていますがTrueAP像の場合は骨頭と関節窩が”重なっていない”のが特徴です。
ではどのように撮影したら上腕骨頭と関節窩が重ならない画像を投影することができるのでしょうか。
正面TrueAPは基本的には座位か立位で撮影します。(RoutineAPも座位か立位が基本) このとき、身体を斜めにして撮影します。 上のイラストのように約30°斜めになることで上腕骨頭と肩甲骨関節窩が重ならなくなるのがわかります。
右のTrueAP像とRoutineAP像を並べてみると見え方が結構違うのがわかります。
TrueAPでは大きく分けて 1.第二肩関節 2.上腕骨頭 3.肩甲骨関節窩 これら3部分を意識して確認するようにしています。
・骨折、脱臼の有無 ・骨変性の有無(骨棘) ・石灰化の有無
なかでも肩峰下関節面と大結節の上縁は肩峰下インピンジメントにより骨棘が形成されやすい部分でもありますのでチェックしましょう。 また、石灰の有無は正面TrueAPとあわせて斜位矢状面から見るScapula Y像と照らし合わせながらどのあたりに石灰があるのかを確認しましょう。
体外衝撃波のみならず、どのような関節運動で痛みが生じるのか、生じやすいのかがイメージしながら介入・指導をしましょう。
・骨折、脱臼の有無 ・骨変化(硬化・透亮像)の有無 ・石灰化の有無 こちらがRoutineAPの上腕骨頭とほとんど同様です。
・剥離骨折の有無 ・関節面の変性 ・石灰化の有無
なかでも関節窩面の変性をみるのであれば正面TrueAP像は必須の画像となります。 正面TrueAPでは関節面がきれいに投影されるため、変形性肩関節症の変性部分の把握などを行うのであれば正面TrueAPを用いましょう。
こちらは画像の通りです。 ・GHの変形と狭小 ・GHの変形、肩峰下骨棘、肩峰下の狭小化 ・肩峰下の石灰(肩甲下筋部にもあります) 疾患の特徴などはまた別の場を設けて解説させていただきます(^^)
では次に、レントゲン画像のなかで臨床に応用しやすいものを紹介したいと思います。
質問ですが皆さんは骨頭と関節窩のサイズを計算してその情報を臨床に落とし込んでいますか?
肩甲上腕関節の適合性を評価する方法はいくつかあります。
本記事では種々の適合性の指標の中から私が普段から活用しているものを2つ紹介します。
上腕骨頭径と肩甲骨関節窩径比の計算は非常に簡単です。 そして判断基準、治療展開までも至ってシンプルです。
ここで出てきた数値が75%以下であれば上腕骨頭に対して肩甲骨関節窩が小さい(関節窩の発育が悪い)という見方をします。
では実際に2つのレントゲン画像を用いて検証してみましょう。
まずは数値の入っていない2つの画像をみてどちらの方が”骨構造として安定性を欠いているか”を感覚的に考えてみてください。
いかがでしょうか? どちらも正面TrueAP像です。
なんとなく分かりましたか?
では左のレントゲン画像から計算してみましょう。
A=50.23㎜ B=39.19㎜ A/B×100=78.0%
左の画像は骨構造の安定性は正常範囲内であることがわかります。
では次に右の画像も計算してみましょう。
A=52.39mm B=34.26mm A/B×100=68.3%
右の画像は上腕骨頭に対して関節窩が小さいのがわかりますね。
もちろん肩関節の安定性は骨構造によるものだけでなく、軟部組織や肩甲骨機能、姿勢など多くの要素が複雑に関与します。
また、骨構造ひとつをとっても骨頭と関節窩の比率だけでなく関節窩の形態、関節窩の深さなども関与してきますので一概には言えませんが、骨頭と関節窩の比率も非常に重要な指標の1つですので可能であれば臨床前に1分でもいいので時間を割いて計算してみてください。
では最後に正面TrueAP像で有名なMoloney's archを紹介して本記事を締めたいと思います。
Moloney’s archはレントゲン画像入門者の王道中の王道です。
上腕骨頭と肩甲骨関節窩の適合性や肩甲骨位置の指標として用います。
左画像のように上腕骨頭が上方に変位している例や右画像のように骨頭が下方に変位している例も多くあります。
ぱっと見ても中央画像のMoloney's archが(石灰はありますが)一番きれいな曲線を描いているのがわかりますよね。
このようにレントゲン画像には理学療法評価ではみることができない(見きれない)情報が多く含まれています。
日々の臨床で忙しい方も、画像を確認することlosstimeと思わず、advantageと考えて時間を捻出してみてはいかがでしょうか?
お疲れさまでした。 今回はレントゲン正面像についてまとめさせていただきました。
本記事を読んで少しでも明日の臨床に活かしてくだされば嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました✨
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1)Vivek Monoharan,et al.A Normative Anatomic Study of the Glenohumeral Joint and Rotator Cuff Tendons.Proceedings of Singapore Healthcare 2014.23(3):201-208 2)Sahu D, et al. Geometric analysis of the humeral head and glenoid in the Indian population and its clinical significance. JSES Int. 2020;4(4):992-1001. 3)Milner GR, Boldsen JL. Humeral and femoral head diameters in recent white American skeletons. J Forensic Sci. 2012 Jan;57(1):35-40. 4)Wolfson AB, Harwood-Nuss A. Harwood-Nuss' Clinical Practice of Emergency Medicine. October24,2014. 5)安藤英次 著.図解 上肢投影法,出典 株式会社 オーム社.2011.