
こんにちは。
肩関節機能研究会の郷間(@FujikataGoma)です。
今回は第二肩関節に存在する『肩峰下滑液包』の病態とその臨床応用について解説していきたいと思います。
肩峰下滑液包には肩関節における重要な機能がある一方、肩関節周囲炎や腱板断裂など様々な病態にも密接に関与する組織ですので、本記事をきっかけに基礎的な内容から臨床に落とし込めるところまで一気に覚えてしまいましょう(^-^)ノ

肩峰下滑液包とは?
肩峰下滑液包(sudacromial bursa:SAB)は滑液包の中でも人体最大の関節包といわれており、その幅は肩峰下や烏口突起、三角筋の一部にまで広く存在しています。
前額面から見ると肩峰下滑液包は三角筋と肩峰の深層に存在し、更に深層には棘上筋が位置しています。
この部位を”第二肩関節”といい、肩関節を円滑に活動するために機能している組織であると言われています。
皮膚
三角筋-肩峰
肩峰下滑液包
棘上筋
上腕骨頭と肩甲骨
~~~深層~~~
広義の肩峰下滑液包と狭義の肩峰下滑液包
肩峰下滑液包という言葉やその意味は既に知っているという人も多いかと思いますが、実は一般的に言われている肩峰下滑液包はもう少し細分化されています。
みなさんが解剖学の授業で学んだ肩峰下滑液包は広義の肩峰下滑液包であり、黄色枠線で囲ってある全範囲を指します。
そして、狭義の肩峰下滑液包(SAB)というのは、実は赤枠で囲ってある部分だけであり、その範囲は肩峰直下のみとされています。
では赤枠以外の滑液包は何という組織になるのでしょうか?
青枠で囲ってある部分の滑液包は三角筋下滑液包(SDB)といい、文字通り三角筋の深層に位置します。
そして緑枠で囲ってある部分の滑液包は烏口突起周囲の滑液包であり、烏口下滑液包(SCB)といいます。
冒頭でも説明したように、肩峰下滑液包は人体で最も大きい滑液包であり、自由神経終末(痛みなどの受容器)も豊富な組織です。
ですので普段の臨床から細分化して、『どこの滑液包による病態なのか?』を考察することで、臨床効率も上がってくるかもしれませんね。
肩峰下滑液包の機能
コチラの項では肩峰下滑液包の機能と異常について解説していきます。
冒頭でも解説したように、肩峰下滑液包は第二肩関節において運動を円滑に行う滑動性を高める機能を担っています。
では、肩峰下滑液包の滑動性が低下(リハビリ界隈では癒着と表現しますが、ここでは”滑動性の低下”と表現させていただきます。)するとどのようなことが起きるのでしょうか?
通常、キャタピラ様に動く肩峰下滑液包の滑動性が低下すると肩関節の内転制限や外転制限が生じますが、臨床上でその影響は内転時に生じやすいといわれています。
特に、肩峰下滑液包の中でも前方(肩峰下滑液包SABの前方や烏口下滑液包SCB)の滑動性低下による肩関節内転、外旋制限は顕著に生じやすく、凍結肩においては長期化するケースが散見されます。
臨床で肩関節の可動域制限により中々改善しない症例に対して、第一選択としてはどうしても筋肉による制限を考えてしまうかもしれませんが、必ずしも筋肉だけの影響とは限りません。
滑液包はもちろん、関節包や靭帯、そして骨の影響(骨棘変性など)なども疑いながら介入することも重要です。
肩峰下滑液包の滑走動態
では肩峰下滑液包の滑走動態をエコーで観察してみましょう。