臨床Q&A プレゼント用

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腱板のなぜ?

 

Q.腱板はなんで治癒しないんでしょうか?

悩む人
腱板断裂の患者さんかに「腱板が治癒しない」ということを説明した時に【なんで治らないの?】と質問されて、「あっ…そういえば何でだ?」と疑問に思いました。

郷間
A.この質問は患者さんからもよく聞かれますし、私も臨床出たての頃は答えに困ることがありました。
「軟部組織に分布する「血管」が答えを握っている」と考えています。
といいますのも、腱板(損傷)断裂は腱板付着部で生じますが、この部位は血管が乏しくて治癒(再生)がしづらいとされているからです。

Q.腱板が断裂していると全員症状が出るんですか?

郷間
A.全員症状が出るわけではありません。腱板が切れていて症状は出る人(有症候性腱板断裂)は1/3といわれています。

 

Q.腱板断裂の方に対してどのような時期や具合で断裂部に伸張、収縮を加えるか?

悩む人
腱板断裂した収縮、伸張させていいの?

直井
疼痛が強い時期には断裂部にストレスのかかる動作(伸張、遠心性収縮)を避けて対応します。収縮を入れるタイミングはエコーで血流増生がなく、疼痛が軽減した時期から進めます。断裂部に積極的な伸張ストレスを加えるような治療手技等は行わないようにします。

柳沢
基本的には疼痛の程度によって決めています。棘上筋であれば内転動作は伸張ストレスとなるために、早期は避けています。収縮に関しては徐々に短縮位の収縮を行なっていきます。

Q.腱板断裂の方への介入で収縮様式はどのように選択して行っていますか?

悩む人
腱板断裂の方の腱板exで収縮様式どのように選択してるんだろう?

直井
短縮位収縮⇨低負荷での等尺性収縮⇨等張性収縮(求心性⇨遠心性)の順で行っています。

柳沢
等尺性収縮から始めて求心性⇨遠心性と進めています。
腱板断裂の方はレセプターが低下していたりと運動感覚が乏しい方が多いため、運動学習や収縮感も入力するため低負荷の等尺性収縮から始めています。

Q.腱板収縮を様々な角度で行う理由は?

直井
肩甲上腕関節は運動に伴い骨頭は求心性を保ちながら、運動する必要があります。
そのために各フェーズで腱板筋を収縮させて、動的安定性を担保する必要があります。

柳沢
さまざまな位置で収縮させることで、腱板を介して関節包にアプローチできます。
それにより感覚器として運動覚を刺激して、上腕骨運動を安定させるためです。

肩関節周囲炎のなぜ?

Q.夜間痛はなぜ生じるのですか?

志水
夜間痛が生じる原因の1つとして"肩峰下圧の上昇"が考えられます。
また肩峰下圧が生じる原因としては以下の3つが挙げられます。
①1次的要因(炎症が大きな原因)
②2次的要因(癒着が大きな原因)
③肢位による変化

Q.夜間痛の原因として挙げられる烏口上腕靭帯の伸張ストレスのメカニズムを教えて下さい

悩む人

烏口上腕靭帯のストレスのかかる肢位が分かれば、夜間痛も減ると思うのに

郷間
  1. 烏口上腕靭帯は上腕骨外旋位で前部・後部線維ともに伸張します。肩甲骨前傾・外転位となることで上腕骨は相対的に外旋位となります。その肢位になると烏口上腕靭帯に豊富に存在する自由神経終末(痛みの受容器)にメカニカルストレスが加わり痛みが出現するので、僕は普段の臨床で過度な肩甲骨前傾・外転位の抑制を意識して上腕骨が相対的に外旋位の肢位にならないように意識をしています。詳しくは動画のほうをご覧ください。

Q.炎症期から拘縮期へ移行した際の指標は?

直井
A.キーポイントは疼痛だと思います。
疼痛が強い時期(安静時痛、夜間痛 )▶炎症期
疼痛が少なく、可動域制限がメイン▶拘縮期
このように判断します。

柳沢
A.補足です。
・夜間時の寝返りで覚醒するか?
・どういった服薬でどのような変化が起きるのか?
このあたりも確認すると良いです。

Q.炎症期から拘縮期治療方針は?

直井
A.炎症期の場合はポジショニングをしっかり指導しつつ、肩甲上腕関節を過剰に動かすことで疼痛が助長、再燃する可能性があるので、肩甲上腕関節よりも肩甲胸郭、肩鎖、胸鎖関節、脊椎にアプローチします。
拘縮期は肩甲上腕関節の拘縮や可動域制限に対して主にアプローチしています。

 

Q.急性期におけるADLの注意動作はどのように伝えている?

悩む人
患者様から動かすと痛いと言われること多いけど、ADL動作での注意点どのように伝えたらいい?

直井
A.疼痛のある動作は控えるように指導します。特に着替え運転、家事動作(重いものを持つ、高所のものを取る)は注意し、基本的には健側で代償してもらうよう指導しています。

柳沢
補足です。疼痛がNRS5を超える動作は注意していただきます。しかし、生活上どうしても必要な場合は、リハビリ時に代償動作も含めた指導をしています。

Q.炎症期でのセルフケアで注意することは何ですか?

志水
A.痛みの少ない範囲で可動域訓練や運動療法を実施することが重要です。
ポイントは以下の3つ。
1.隣接関節への運動指導
2.痛みの出にくい動作指導
3.痛みが強い場合は、ウォーキングや自転車などの有酸素運動

 

Q.上腕外側に疼痛が出現する原因は?介入方法も教えてほしいです。

悩む人
腕が痛い患者さんが多い。腕に介入しても痛みが改善しないから困っているんだよ~。

郷間
上腕外側に疼痛を訴える患者様の多くは、QLS内に走行する腋窩神経が圧迫ストレスが原因で症状が出現します。
というのも、外側上腕皮神経という腋窩神経領域を支配する知覚枝にトラブルが起きるからです。
この場合、「小円筋、大円筋、上腕三頭筋長頭、上腕骨で囲まれた隙間」であるQLS(Quadrilateral space)に介入すると症状が改善することが多いです。

石灰沈着性腱板炎のなぜ?

Q.石灰沈着性腱板炎とはどんな病態ですか?

悩む人
あまり聞いたことない疾患だなぁ。特徴的な病態は何だろう?

郷間
A.肩関節周囲炎や腱板断裂よりも痛みが強いと言われています。腱板周囲に石灰が沈着しインピンジメントや擦れにより疼痛を伴います。特に棘上筋第二肩関節に多いです。中年期に好発して、女性が1.5倍多いのが特徴です。
急性期では突然の夜間痛や安静時痛が特徴的です。

インターナルインピンジメントのなぜ?

Q.インターナルインピンジメントとは?

直井
肩関節外 転および外旋位において上腕骨大結節の腱板付着部と肩甲骨関節窩後上縁が接触 もしくは衝突し、腱板関節面などが挟み込まれる現象。 野球では投球側肩関節が外転および最大外旋するlate cocking phase で生じることが多い

柳沢
補足として、生じる原因としては上腕骨後捻角の増大や後方tightnss、前方関節包の弛緩などが挙げられます。

 

Q.インターナルインピンジメントの評価は何をする?

柳沢
まずは問診で後ろの物を取ったときなどに後方の痛みを訴えたり、投球障害で後方の痛みを訴えていた際にはインターナルインピンジメントを疑います理学療法評価としては、Hyper External Rotation Test(HERT)を行い再現痛を確認します。その後、肩甲上腕関節の2nd外旋可動域に問題があるかを確認します。可動域に問題がなければ腱板機能に問題がないか確認します。問題がない場合、肩甲骨由来なのか、胸椎由来なのかを判断するため肩甲骨後傾・内転他動可動域や胸椎伸展・回旋可動域を確認します。可動域に問題がなければ、筋機能的な問題や筋発揮の初動操作に問題があると考えられるため、主動作筋である僧帽筋下部の筋力評価を確認します。これでも問題が確認されなければ、下肢機能に問題がある可能性があるため骨盤より遠位の可動域や筋機能を確認します。

直井
補足として、2nd外旋時に後方組織(棘下筋、小円筋)の収縮を確認したり、インターナルインピンジメントと診断された症例の中にもBennett骨棘(肩甲骨関節窩後下方の骨棘)の有無を画像から確認することも重要だと考えています。

評価のなぜ?

Q.なぜ、肩甲骨を固定して可動域を測るのかがわかりません

志水
A.肩甲骨を固定して可動域を測ることで、純粋な肩甲上腕関節の可動域を把握することができます。
純粋な肩甲上腕関節の可動域を測ることで、肩甲上腕関節周囲のどの組織に問題があるかを推測もできるので、治療対象を明確に絞ることもできます。
詳細は記事を読んでください↓

Q.肩甲骨の固定の必要性はわかったけど、どうやって固定したらいいかわからない

志水
A.肩甲骨を固定するには、「固定するポイント」があります。
①固定する場所
→肩甲棘と鎖骨端
②固定する方向
→肩関節屈曲の場合は肩甲骨を前傾方向に"止める"
言葉にするとこのような感じですが、詳細は動画をご覧ください

 

Q.肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節由来の制限の判別はどのようにしたらいい?

悩む人
肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節どちらの制限かを判別する方法ってどうのようにしたらいいの?

直井
判別方法としては肩甲骨を固定し肩甲上腕関節の可動域を評価します。健側と左右差がある場合は肩甲上腕関節由来を疑います。しかし、基本的に可動域制限をきたす症例は肩甲上腕関節に制限因子があると思っています。

柳沢
イメージの補足ですが、肩甲上腕関節の可動域がしっかり出ている方は肩甲骨周囲筋のタイトネスが生じにくいと考えています。まずは、肩甲上腕関節の評価を確実に行うことが重要と考えています。
▶肩甲上腕関節の可動域評価については「Q.肩甲骨の固定の必要性はわかったけど、どうやって固定したらいいかわからない」をご覧ください。

Q.前上方に挙上時痛がありますが、組織の鑑別方法がわかりません。どのように評価していますか?

悩む人
どうやって組織を鑑別しているんだろう?

直井
挙上時痛なので原因としては・・・
①骨頭の上方化に伴う前上方組織の拘縮、滑走不全
次に、そこにどんな組織があるのかというと・・・
組織的には烏口上腕靭帯、上腕二頭筋長頭腱、三角筋前部線維、肩甲下筋、棘上筋、 腱板疎部があるので、前上方組織の拘縮であれば各組織の伸張痛も確認します。
前上方のインピンジメント
・インピンジメントを疑う→Neer,Hawkinsテスト
・LHB炎を疑う      →Speed、Yergasonテスト

柳沢
前方はまずLHB由来を考えます。
そこで、スペシャルテストや圧痛所見を確認します。
除去した後に肩甲下筋の収縮時痛を確認し、最後に内転制限を調べます。
内転制限は内旋位と外旋位で見ることで制限因子を判別します。

Q.後方タイトネスに対する評価と考え方

直井
後方タイトネスは主に棘下筋小円筋三角筋後部線維が制限因子となるために評価しています。
棘下筋   
支配神経:肩甲上神経  
伸張方向:肩伸展+下垂位内旋
小円筋,三角筋
支配神経:腋窩神経
伸張方向:水平内転:三角筋後部  3rd内旋:小円筋
と支配神経が異なるために圧痛を確認するとともに伸張痛も確認します。 
*余程、固い場合には後方関節包の拘縮も疑います。

柳沢
後方タイトネスは結帯HFT3rd内旋を評価します。
また、後方タイトネスは骨頭の前方偏位によるマルアライメントが原因で生じていることもあるため、骨頭を後方にモビライゼーションした前後での可動域評価を行い、変化があれば骨頭の位置不良が問題と捉えています。
患部外要素としては、肋骨の内旋方向の可動域を評価します。外旋位であれば広背筋が働きすぎてしまうため、水平内転での肩甲骨内旋方向への追従運動が乏しくなってしまうことでGH内旋が過剰になりタイトネスを生じてしまいます。

内旋制限に対する評価と考え方

直井
内旋制限は棘下筋の伸張性低下、肩後方関節包の拘縮を疑います。
伸展位内旋で棘下筋で棘下筋は伸張され、後方関節包は外転位内旋で伸張感を確認しています。

柳沢
内旋制限は棘下筋と小円筋、後方関節包の3つに分けて評価してます。
烏口突起側にTranslationしてくる場合は棘下筋、肩峰側にTranslationしてくる場合は小円筋に対して介入します。
End Feelが明らかな筋性ではなく、抵抗感強い場合は後方関節包と評価して介入しています。

肩外転時には痛みがないが、下ろす時の痛みに対する考え方

悩む人
肩外転動作で痛み無くなったのに下ろす時に痛みが出るのは何故だろう?

直井
肩を下ろす際に痛い場合は腱板の遠心性収縮、肩甲帯の機能不全を疑います。 特に極上筋の圧痛、肩甲骨の上方回旋、内転筋力の確認します。 また、他の要因として肩峰下滑液包の内圧上昇を疑い、挙上位に伴い骨頭上方化が問題と考え、挙上位での腱板筋の機能も重ねて確認するといいと思います。

柳沢
補足ですが、肩甲骨上方回旋や下方回旋筋による肩甲骨安定性低下による問題が考えられます。腱板筋が働くためには肩甲骨関節窩と骨頭の位置関係が重要と考えています。そのため、上腕骨の位置によって肩甲骨が安定して動ける機能を出して行く必要があると思います。