みなさんこんにちは、肩関節機能研究会 研究生の佐藤雅文です😄
(Twitter⇨@masagaze、Instagram⇨@masafumi_s_)
今月の無料記事では肩関節周囲炎について、“不活動による弊害”を踏まえて考えていきたいと思います。
まず記事を読んでいただくにあたり知っておきたいこととして、
肩関節周囲炎の一般的な病期としては
①炎症期(痛みが強い) ②拘縮期(硬い) ③回復期(痛み・硬さともに改善してくる)
があるということです。
※◯◯期という表現は異なる場合があります。
その他、肩関節周囲炎の定義や歴史などの基本的な内容については、代表の志水先生(@echohuku)がわかりやすくまとめてある記事があるので、まずはそちらをご覧ください。
・不活動がどのような弊害を起こしうるのかわからない
・具体的な”痛みの恐怖ー回避モデル(fear-avoidance model)”をイメージしにくい
はじめに
さきほど述べた様な肩関節周囲炎の病態や病期を理解することで、
・炎症期様の症状が落ち着くにしたがって、少しずつ積極的な可動域練習を行っていこう
痛みの恐怖ー回避モデル(fear-avoidance model)
不活動による弊害について考える際に、知っておきたい重要な心理学的モデルについてご紹介します。

参考:Vlaeyen JW, et al : Fear-avoidance and its consequences in chronic musculoskeletal pain : a state of the art : pain 85(3),317-332,2000.
上のスライドで見てみると、赤部分の”損傷”から青で表記されている左側へのループがそれにあたります。
肩関節疾患の患者さんではどうなのか?
痛みの強さ・および障害の永続化に関与していた。
Javier MC, et al : The role of psychological factors in the perpetuation of pain intensity and disability in people with chronic shoulder pain: a systematic review. BMJ Open,8(4):2018.
とも報告されています。
報告により対象や条件が異なるため、エビデンスの質はそれほど高くないと言われていましたが、
心理的要因と、慢性的な肩関節痛の強さと障害の永続化に関しては”少なからず関係性があるのではないか?”といった視点を持つことは大事だと思っています。
肩関節周囲炎患者さんを例に、具体的に考えてみると…
一般的な肩関節周囲炎はある程度の期間痛み刺激を経験される方が多く、
特に疼痛が強い時期では“寝ようとすると強烈な痛みがあり睡眠不足になる”、“家事や日常生活で上肢を用いようとした瞬間に痛くなり、うずくまってしまった”(①痛み体験)などの経験をされる方は多くいらっしゃるかと思います。
その後“着替えや洗濯、洗い物をしようとすると、またうずくまるような強い痛みがでるかもしれない”(②破局的思考の反芻)といった考えが繰り返し頭に残り、
痛みに対する不安・恐怖(③痛み関連不安)から、患側上肢を使わないように動かさないでいる(④過剰回避行動)といった恐怖への回避行動を取り、
結果として患側上肢の使用頻度の減少(⑤不活動)や、ADLや生活動作制限を引き起こし、それが更なる疼痛惹起につながる などが起こり得ると考えることもできるかと思います。
不活動による疼痛閾値への関与
これまでの話で、不活動が悪循環の一部を担う可能性があることがなんとなく理解できたかと思います。
その他に、不活動そのものが疼痛閾値を低下させることも報告されています。
この報告では、健常者の左前腕〜手関節をギプスで4週間固定した際、
それぞれ0、3、28日後、可動域測定をした際に運動時痛の訴えが見られたということと、
それぞれ全てのタイミングに疼痛閾値の低下が認められた、と報告されていました。
Terkelsen AJ, et al : Experimental forearm immobilization in humans induces cold and mechanical hyperalgesia. Anesthesiology 109 : 297-307,2008.
末梢性感作や脊髄後角細胞の可塑的変化を惹起する可能性がある
また、他にもOkamotoらによって“不活動は炎症と同様に、一次求心性ニューロンに感作が生じる可能性がある”といった報告や、
Ushidaらによって、“不活動が脊髄後角細胞の可塑的変化を惹起する”と言った報告もされており、
不活動によって、末梢から非侵害的な刺激が入力されただけでも、痛みとして知覚される可能性がある。といったことが考えられます。
Okamoto T, et al : sensory afferent properties of immobilised or inflamed rat knees during continuous passive movement. J Bone Surg Br 81 : 171-177,1999.
Ushida T, et al : Changes in dorsal horn neuronal responses in an experimental wrist contracture model. J Orthop sci 6 : 46-52,2001.
まとめ
・破局的思考や不安、恐怖に関連した恐怖回避行動によって、不活動につながる可能性がある。
・不活動により疼痛閾値の低下が起こる可能性がある
・不活動により一次求心性ニューロンに感作が起こる可能性がある
・不活動により脊髄後角細胞に可塑的変化を惹起する可能性がある
結論としては、
安静が求められる場合を除くと(拘縮期〜回復期)、
「過剰な安静は、痛みの悪循環に陥る可能性がある」といった認識を持つことが重要で、
患者さんとこれらの考えを共有しながら、日常生活から不活動を予防する必要があると考えています。
いかがだったでしょうか^^;
言葉足らずな部分もあったかと思いますが、
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