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初めまして、私は理学療法士の老月隆太郎【@oidukiryutarou】です。
今回は、上腕骨近位部骨折に対するリハビリテーションについてご説明をしていきたいと思います。
突然ですが、上腕骨近位部骨折を担当した際に、皆さんは臨床でこのような悩みを持っていませんか?

どんなリハビリテーションをしたらいいのかな?

そこで、このような内容のテーマでお話しをしていきます!
概要
上腕骨近位部骨折は、大腿骨頸部骨折、橈骨遠位端骨折、脊椎圧迫骨折とともに高齢者に起こりやすい骨折の一つであり、骨粗鬆症との関連が指摘されています。
また、発生頻度は、全骨折の5%程度とされています。
大部分が外科頚骨折で転倒に伴う直達外力での受傷であると言われております。
骨折の分類
骨折の分類では、Neer分類やAO/OTA分類が一般的に用いられます。今回は特に診療で用いられているNeer分類についてご説明をしていきます。
まず、1cm以上の離開あるいは45°以上の回旋変形がない場合を1−partになります。1ーpart以上の離開あるいは変形がある場合を2―part、3―part、4―partに分類されます。
パートとは、骨折により転位した骨片の数になります。骨片が1つ転位していれば、2-partと表現し、骨片が3つ存在すれば、4-partとなります。
さらに、部位ごとに解剖頸、外科頸、大結節、小結節、脱臼骨折の前方、後方に分けられます。この分類の最大の特徴は,骨折型と治療法選択との関係がわかりやすいことがあげられます。
なおNeer自身が2002年に従来の分類に4-part外反嵌入骨折を追加しているので、現在ではこの改訂Neer分類を用いることのほうが多いです。
骨の修復過程
Coldwellによると上腕骨の上端部は下記の期間がかかると報告しています。
- 仮骨の出現 2〜4週
- 骨癒合 6週
- 機能回復 8〜12週
骨の修復過程は、下記の3つに分かれています。
- 炎症期
- 修復期
- リモデリング期
炎症期は、組織損傷あるいは手術後、数時間から7日間であり、形成された血腫の周囲に炎症性反応が生じ、壊死組織が除去・吸収されるとともに血管新生が生じます。
修復期は、線維芽細胞および軟骨芽細胞が炎症部に認められ、類骨組織で骨折端同士が連結されます。そして、類骨にカルシウムが沈着し、仮骨形成されます。
リモデリング期とは、骨の吸収とより強固な構造への置換の過程を指しています。2)5)
保存療法と手術療法の判断基準
セラピストが術式を決めることはありませんが、手術の判断基準は知っておく必要があると思います。その理由として、整形外科医がどのような意図で、術式を決定したのかを理解するためです。それによって、リスク管理やリハビリテーションが異なりますので、ある程度の手術の判断基準は把握しておきましょう。
1―part骨折や2―part骨折の外科頸骨折では、原則として保存療法が選択されます。しかし、大結節骨折の5mm以上転位がある場合や外科頸部の20mm以上の転位は観血的治療を勧めると池上らは報告しています。
2―part外科頸骨折で手術を行う場合には髄内釘を選択されます。
3part骨折と若年者の4―part骨折に対して手術を行う場合には、プレート固定を選択されます。
3―part骨折と4―part骨折の高齢者では、人工骨頭あるいはリバース型人工肩関節全置換術が選択されます。
保存療法と手術療法のリハビリテーション
可動域訓練と荷重の開始時期についてご説明をしていきます。
まず、保存療法であれば、転位の増大や仮骨形成の有無などを、手術療法であれば、固定性などを画像で確認しましょう。そして、一般的なプロトコルに沿って、進めて良いかを整形外科医と協議をする必要があります。そのため、一般的な可動域や荷重の開始時期を知っておく必要があります。
それでは、他動運動と荷重の開始時期についてご説明していきます。
他動運動と自動介助運動では、保存療法と手術療法ともに2〜4週と報告されています。
この時期での骨の修復過程では、炎症期が終わり、修復期の仮骨形成が出現する時期5)になりますので、転位の増大や仮骨形成の有無など画像で確認できると良いかと思います。
また、人工骨頭置換術の術後の可動域訓練に関して、三笠ら1)によると、烏口上腕靭帯や腱板疎部の癒着を予防するため、外転と外旋の可動域獲得が重要であると報告しています。
この時期に振り子運動やstooping exerciseを開始していくと良いとの報告もされています。
stooping exerciseに関して、聞き慣れない方も多いかと思いますが、stooping exerciseとは、立位から肩の力を抜き前屈みの姿勢を取らせることで、肩関節を構成する筋、靭帯、関節包などの組織の柔軟性と伸長性の維持・回復を図るものです。
この姿勢では、上肢の重さが軟部組織のストレッチング効果をもたらすことができることを報告しています。2)この姿勢で前後・左右に振り子のように動かすことを振り子運動と言います。
振り子運動に関して、石黒ら3)4)は,受傷後1週より下垂位振り子運動による早期運動療法について報告しています。立位や前屈位の保持が可能で、上腕骨頭の骨折面と骨幹端の骨折面との適合性が得られる症例が対象で1日1,000 〜3,000回の振り子運動をすると良いと報告しています。
続いて、自動運動と荷重開始時期についてご説明をしていきます。
保存療法と手術療法ともに自動運動と荷重の開始時期は6〜8週程度と報告されています。
この時期は、骨の修復期間でいうと、修復期が終わり、骨の癒合が得られてくる時期5)ですので、転位増大や骨癒合の程度など画像を確認の上、必ず整形外科医と協議の上で開始して下さい。
まとめ
・骨折の分類として、改訂Neer分類で骨折の程度を把握しましょう。
・骨折の修復過程として、Coldwellらによる仮骨の出現、骨癒合、機能回復の期間を把握しましょう。
・保存療法と手術療法の判断基準を把握しましょう。
・保存療法と手術療法のリハビリテーションとして、可動域訓練の開始時期と荷重開始時期の目安を知っておきましょう。他動運動と自動介助運動の開始時期は2〜4週。振り子運動やstooping exerciseの開始時期は2〜4週。荷重開始と自動運動の開始時期は、6〜8週です。
参考書類
1)三笠元彦 MB Orthop. 17(4):p46-52.2004
2)松本正知:骨折の機能解剖学的運動療法 総論・上肢.中外医学社.p52−76
3)石黒隆,橋爪信晴 他:上腕骨近位端骨折に対する保存療法一下垂位での早期運動療法一.整形災害外科.50:p325-332.2007.
4)石黒隆:高齢者の上腕骨近位部骨折①保存療法一L腕骨近位端骨折に対する下乖位での早期運動療法について一.達人が教える外傷骨折治療.糸満盛憲ほか編.p70-77,全日本病院出版会,2012.
5)石川朗:運動器理学療法学Ⅰ 15レクチャーシリーズ.中山書店.p4-7
6)江藤文夫:骨折の治療とリハビリテーション.南江堂.p66-80