肩関節運動に伴う上腕骨頭の位置について

老月
こんにちは。肩関節機能研究会研究生の老月隆太郎です。
今回は、上腕骨頭の位置についてご説明をしていきます。
皆さん、突然ですが、各関節運動によって、上腕骨頭がどのように動いているか意識していますか?

悩む人
座位姿勢で下垂位での、骨頭の位置をなんとなく評価はしていたけど、各関節運動でどのように動いているかまでは、意識していないな…。

老月
今回は、骨頭の位置を各関節運動によって、どのように動いているかいくつかの論文を基に、ご説明をしていきます。

はじめに

 まず、皆さん学生時代に、関節内運動は凹凸の法則に基づいて、転がり運動滑り運動で関節が動くと教えてもらったのではないでしょうか?
 実は、2010年頃から、肩関節の各関節運動において、上腕骨頭が関節窩中心より、移動することを示唆する論文が海外でいくつか報告されています。
 つまり、上腕骨頭の運動方向が凹凸の法則に従わないと近年議論されています。
 その根拠となる論文をいくつかご説明をしていきます。

肩関節の各関節運動に伴う骨頭の動き

 Wernerら1)は、肩甲上腕関節の運動中の上腕骨頭の関節窩に対する相対的位置に関節包が及ぼす影響を調べました。

 

 この研究では、新鮮凍結遺体の肩関節8体を用いて、皮膚・皮下組織・筋を切除し、関節包と腱板の付着部のみ残して、他動的運動の最終域における骨頭の位置を測定しました。

 

 その結果、肩関節外転では、上腕骨頭は、上方やや前方に3.8mm移動し、肩関節屈曲では、前上方に7.3mm移動し、外転時よりも前方に移動することがわかりました。

 また、肩関節内旋では上腕骨頭は前下方に移動し、移動量は0°外転で6.1mm、45°外転で8.0mm、90°外転で12.0mmであり、外転角度の変化に伴い移動方向は少しずつ上方となり、肩関節外転角度が90°外転での内旋では、ほぼ前方となることがわかりました。

 さらに、肩関節外旋での上腕骨頭は、外転0°で0.9mm前下方に移動しますが、45°外転では4.3mm、90°外転では5.6mm後下方に移動することがわかりました。

 

 この研究から、肩関節の各関節運動では上腕骨頭の位置が関節窩中心より“移動する”ことをご理解頂けたかと思います。

 続いては、実際の人体での上腕骨頭の動きについて、ご説明をさせて頂きます。

肩関節外転時の骨頭の変位

 Nishinakaら2)は、健常成人9名(男性8名、女性1名)の肩甲骨面挙上運動中の関節内運動を調べました。この研究ではCTスキャンを基に肩関節の3Dモデルを作成して関節窩に対する上腕骨頭中心の上下運動を測定していました。

 その結果、上腕骨頭は、下垂位では関節窩中心より1.7mm下方に位置し、挙上すると上方へ移動し、挙上80°以上では関節窩中心から1mm下方最大挙上位でほぼ中心に位置しました。

 

 また、Howellら3)は、X線画像を用いて、水平面における骨頭の動きについて調べていました。

 その結果、最大水平伸展・最大外旋位で骨頭は4mm後方に移動し、それ以外の測定肢位である、60〜80°水平屈曲・最大内旋位、水平伸展0°・最大外旋位、最大水平伸展、内外旋中間位では骨頭は中心に位置したと報告されていました。

 

 このように、実際の人体においても、外転動作時に、上腕骨頭は上方へ滑るように変位することや、下垂位では関節窩中心より下方に位置していることをご理解して頂けたかと思います。

 

 続いて、健常者と肩関節疾患における肩関節外転時の骨頭変位についてご説明をしていきます。

健常者と肩関節疾患における肩関節外転時の骨頭変位

  Deutschら4)は、肩関節に異常のない健常者、インピンジメント患者、腱板損傷患者において体重の2.5%の重錘を肩甲骨面挙上した時の上腕骨頭中心と関節窩の位置関係を0°〜120°の範囲で調べました。

 

 その結果、正常肩では、開始肢位では骨頭中心は、関節窩中心の0.4mm下方に位置し、肩関節挙上をしても骨頭中心の上方移動は0.7mm下方でした。

 一方で、インピンジメント患者では開始肢位では、上腕骨頭は関節窩中心の0.2mm下方でしたが、挙上に伴い1.2mmの上方移動がみられました。

 また、腱板損傷患者では、開始肢位では骨頭は関節窩中心の0.3mm上方に位置し、挙上20°までの運動初期に1mmの上方移動がみられました。そこから120°までの間に緩やかに低下しましたが、有意な変化ではありませんでした。インピンジメント群と腱板損傷群の両群で骨頭の平均位置は正常肩よりも有意に上方でした。

 このように、健常者と肩関節疾患において、肩関節外転動作では上腕骨頭の位置は異なることが、ご理解頂けたかと思います。特に、インピンジメントの症例では、健常者と比べ、外転動作時におおよそ1mm程、上方へ変位していることがわかったかと思います。

 

最後に、私がこれらの論文を見た感想をお伝えします。

  • 私たちセラピストは、肩関節において、上腕骨頭の数mmの変位によって生じる痛みを改善するため、腕を磨かなければいけないという、専門職としての自覚を持ちました。
  •  

  • これまで教わってきた知識が、時代の変化と共に、変化していくため、常に最新知見を収集していかなければいけないと感じました。   

    まとめ

    • 肩関節の関節内運動において、上腕骨頭は、外転時に上方へ、屈曲時に前上方へ、内旋時に前下方へ、外旋時に後下方へ変位する。
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    • 肩関節外転動作の最大挙上位で、骨頭中心が関節窩の中心に位置する。
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    • 健常者と肩関節疾患を有する方の肩関節外転動作時の上腕骨頭は上方へ変位する。
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    • インピンジメントの症例では、健常者と比べ、肩関節外転動作時に、おおよそ1mm程、上方へ変位する。

    引用文献

    1) Werner CM .et al:The effect of capsular tightening on humeral head translations.J Orthop Res.22(1):194-201.2004

    2) Nishinaka N et al:Determination of in vivo glenohumeral translation using fluoroscopy and shape-matching techniques.J Shoulder Elbow Surg 17 (2):319-322.2008

    3)Howell SM et al:Normal and abnormal mechanics of the glenohumeral joint in the horizontal plane . J Bone Joint Surg Am 70-A(2):227-232.1988

    4)Deutsch A et al:Radiologic measurement of superior displacement of the humeral head in the impingement syndrome . J Shoulder Elbow Surg5(3):186-193.1996

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