

五十肩となにが違うんだろう?

肩関節周囲炎と五十肩の違いを
曖昧にしたままとなっているのではないでしょうか?
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今回は肩関節周囲炎の"定義"と"歴史"に
しかし,
ここ数年で自分なりに腑に落ちるような論文にであったので,今回の記事ではみなさんと共有したいと思います。
そして、それは次のような方たちにとって有益な情報だと思います。
肩関節の勉強をし始めた人
新人セラピスト
患者さんや新人さんに対して肩関節周囲炎についての基礎知識を説明できる
肩に詳しくない先輩セラピストに、「肩関節周囲炎って知ってる?」って聞かれた時に自信満々に答えれる(笑)

肩関節周囲炎ってなに?五十肩となにが違う?
結論からいいますと
肩関節周囲炎も五十肩も"同じ"意味で使われています。
で、肩関節周囲炎の定義はこちらです
なにかしらの関節内炎症によって肩関節に強い痛みを生じ,次第に肩関節の可動域制限が生じていく後に,疾痛が軽減し て拘縮だけが残り,そして拘縮も経過とともに改善していく
出典:村木孝行. (2016). 肩関節周囲炎 理学療法診療ガイドライン. 理学療法学, 43(1), 67–72.
メチャクチャ簡単にこれを説明すると
↓
痛い
↓
動きが悪くなる
↓
徐々に痛みが引く
↓
徐々に動きが良くなる
↓
治る
こんな感じになるかと思います。
定義の細かい文章は覚えなくてもいいです。ただ、患者さんやクライアントさんに伝えるときはわかりやすいほうが良いと思いますので簡単に覚えておきましょう。
ちなみに,この肩関節周囲炎の特徴として
といった病期(phase:フェイズ)があります。
もちろん,対象者の全員が全員,これを辿るわけではないですが ,多くの人がこのような順で進行していきます。
この病期についてある程度理解しておかないとこのようなことが起きてしまうかもしれません。(詳しい部分はまた別記事でご紹介しますね)
(定義とは少しずれますが、ここではこの病期を理解していないことで僕が経験したことと、今ではどのように対応しているのか?といった点について簡単にご紹介します(^^))
新人時:初回対応後の説明(炎症期を想定)

あまり痛みも強くなく、肩の動く範囲もしっかりとしているのですぐに治ると思いますよ(^^)

少し不安だったので、安心しました!



といった苦い経験があります^^;
実際に時期によってはこのように疼痛が増悪することも考えられますが、この説明では信頼を失う可能性もあります。
今ならこう対応する

非常に今は動きも良くて、痛みも少なくて良いと思います。ただですね,これから痛みが強くなってくる可能性もあるので、日常生活では無理をしないほうが良いかと思います。

そうなんですか?わかりました。
========== 一週間後=========

こんにちは。あれから痛みが強くなっちゃって…



仕事なので仕方ないところだと思いますよ^^;
安静にしても痛みが強くなることだってありますので、気にしなくていいと思います。

最初に予後について話をしておけば、信頼をいきなり失うことは少ないかもしれないです。そしてココで重要なのは【無理に動かして痛みが悪化したことを,必要以上に責めない】ということです。
肩関節周囲炎っていつからある?
この肩関節周囲炎のはじまりは五十肩なんです。といのも、この五十肩という名称が使われ始めたのは「江戸時代」と言われています。←まさかそんな時代から…と思いますよね。
江戸時代(1797年)に発行された当時の俗語(流行語)に焦点を当てた俚言集覧(りげんしゅうらん)という書物にこうかかれていたそうです
「凡、人 五十歳ばかりの時、手腕、骨節痛むことあり、程すぐ れば薬せずして癒ゆるものなり、俗に之を五十腕とも五十肩ともいう。また長命病という」
つまり、「年を取れば肩も痛くなるだろう」的なメチャクチャ適当にいわれていたものが,なぜか今も引き継がれているっていうわけです。
そしてそれ(五十肩という用語)を多くの医師が使っているので、患者さんはわけわかんないですよね。
ちなみに、肩関節の専門医が集まる日本肩関節学会では数年前から「五十肩っていう名称を使うのやめよう!」という働きかけていますが…
【五十肩】という言葉は世間に浸透してしまっているのでそれを覆すことはかなり難しいですよね。
それに医師も患者さんに説明する時は「五十肩」って言っておけば楽ですしね。
そこでもう少しこの五十肩というものを紐解きます。
国内にて五十肩を「肩関節周囲炎」という診断名として使い始めたのは、日本での肩関節の重鎮(医師)である信原病院の信原先生であると思います。(いろいろ調べたけど、確実かわかりません(;_;))
そして信原先生は書籍のなかで肩関節周囲炎を「広義」と「狭義」に分け「肩関節周囲炎」という曖昧な診断をカテゴライズ(分類分け)しています。
カテゴライズの様子はこんな感じです。
「もっと詳しく知りたい」あと「肩好きな人」は、こちらの書籍が信原先生の書いているものになりますが、肩を学ぶ人のバイブルとされているのでオススメです。(ちょっと高いので購入される際はよく検討して下さいね)
ただココで重大な事実なんですが…

「????」
と思った方もいるかと思うのですが、今はもう信原先生が提唱していた「狭義の周囲炎="いわゆる五十肩"」という感じではないようです。
僕はこれを知ったとき…

という感じはありましたが、これはおそらく画像診断装置等の発達により,局所の病態把握が正確にわかるようになったからだと考えています。
そう考えると、さきほどのスライドで示していた"広義"に含まれていたもののほとんどが器質的な損傷であることがわかるかと思います。
そして、このような組織の異常を把握するにはMRI,CT,エコーが有用であり、これらの画像診断の進歩は数十年前に比べると飛躍的に向上していることが、広義の肩関節周囲炎といった表現を今では用いなくなった。と思うと腑に落ちるのではないでしょうか?
もう一度繰り返しますが、今は
かと思います。
ですので、
以前の分類で覚えていた人は
一度整理したほうがいいかもしれません。
と、ここまで来て言うのもなんですが
この定義はあくまでも「理学療法診療ガイドライン」の中で定義しているものであることは理解しておいてください。
※最初に紹介した論文でも,そのように扱われているので、興味のあるひとは読んでみて下さい。
告知
2020年より、肩関節機能研究会ではXPERTというプラットフォームにてウェブセミナーを行っています。
現在(2021)はインピンジメントを徹底攻略するセミナーを行っています。
嬉しいことに前回の開催では95名(定員)がご参加いただいたセミナーとなっております。
概要だけでもみていただけるとなにか興味のあることが見つかるかもしれません。
こちらをクリックして除いてみてください(^^)